マーケティング:壁に当たるのがメール等のパーミッション取得。でなければコミュニケーションが始まらない。その取得設計とは。

Marketing Automationはさまざまなチャネル、それこそメールからLINE、モバイルアプリ、そして実店舗まで含めた横断的なコミュニケーションをPersonalizeすることですが、昨今では大きな壁となっているのがいわゆるパーミッション。パーミッションとはつまり「販促目的の連絡を送っていいですよ、受け取りますよ」という”ユーザーからの同意(許可/パーミッション)”のことです。気をつけなければならないのが、販促を目的とせずサービス提供のために送付される連絡(例えば請求額の通知など)はパーミッションが不要です。

今やチャネル個別にパーミッション取得が必要。そしてこれが現代のマーケティングの障壁にもなっている。

Web cookieのことは非常に有名で一般消費者も色々なサイトにアクセスするたびに「cookie取得と利用を許可しますか?」といったポップアップを目にすると思います。それがWeb cookieにおけるパーミッション取得です。一般消費者からするとイメージが異なるかもしれないのがメール。よく「メールマガジンに登録しますか?」と聞かれたり、抽選で何かが当たるキャンペーン時にメールアドレスの記載をすることがあると思います。昔は本当に任意にメールマガジンが欲しい人が登録するものでしたが、現在ではこういった方法でパーミッションを取ることで、ようやくなんらかの販促メールを送付することができるようになるわけです(メルマガ、と聞くだけで煩わしく感じることも多いのではないでしょうか)。消費者が思っているより企業側はこの同意をもらうことに必死なんですよね。

そして情報の洪水から消費者を守るようになったことでマーケティングとして苦しいのが、コミュニケーションチャネルごとにパーミッションを取得しなければならないということ。メールならメールパーミッション、電話やSMSなら電話番号に対するパーミッション、そしてモバイルアプリならそもそもインストールしてもらってPush通知等の許可、SNSならフォロー・・・これを各ユーザーに取得していくってかなり大変ですよね?

もちろんある程度の単位、例えば新規にサービスを利用開始したユーザーに対して、メール・電話・DMなどはまとめてパーミッションを取得しにかかります。しかし過去とりあえずメルマガ単品で取得管理を始めてしまった企業では、昔からサービス利用しているユーザーにはメールしかパーミッションが取得できていない、なんていう片手落ちの状態もよくあります。

Personalized Marketingにおいて、コミュニケーションチャネルの制限はコミュニケーションのリアルタイム性・リーチ率を制限する。

これにより何が問題なんでしょうか。

「どれかひとつでもコミュニケーション手段が確立されていればいいじゃない」

と思われる人もいるのかもしれませんが、Personalized Marketingにおいては「ユーザーひとりひとりに」「最適なコンテンツを」「最適なタイミング」「最適なチャネルで」コミュニケーションすることを理想にしています。なので例えばメールだけしかパーミッションを持っていないなら、それは変数をひとつ失うことにもなるんです。

メールは既に”ユーザーに届いたとしてもかなり情報が埋もれやすいチャネル”です。皆さんはメール見ていますか?メールボックスから必要なメールだけ発見するために、販促目的のメールはほとんどタイトルすら読み流している人も多いと思います。僕もそうです。パーミッションを持っていたとて、開いて中身を読んでもらうってかなりハードルが高いと思います。僕の感覚では(直接クーポンでもついてない限り)だいたい30%程度の開封率を目安にしています。開封してさらに目を通してくれるユーザーなんてそれより少ないでしょうね。

これではユーザーへのリーチ(実際にコンテンツを認識するまで)は狭いですし、見る人は見る、見ない人は一切見ないのだと思います。さらにはメールが届いた瞬間に見ることってほとんどなくて、何かの時にまとめて見ます。LINEのようにプライベートで通知を鳴らす設定にしている人なんてほとんどいないでしょうし、それでは例えば”実店舗に近いたときにタイムリーにクーポンを提示して集客する”なんてことは難しいわけです。これがチャネルの制限となります。

また、メールを送って未開封だったら同じコンテンツをモバイルアプリでPushしてみる、といったリーチまでの追いかけもできなくなります。やはりパーミッションを持ったチャネルは多いほど良いと僕は考えています。

パーミッションの取得設計は地盤固めとして、早い段階で綿密な設計が大切。未来の施策の選択肢を絞らないような規約を組んで件数も稼ぐ。

パーミッションの取得設計はとても重要です。Marketing Automationを導入しようがシナリオを磨き込もうが、まずはコミュニケーションの分母が増えなければ効果は大きくなっていきません。なのでこういったプラットフォームを検討し始めるのと同時に、早期の段階でパーミッションの取得設計を進めることが必要です。取得には時間もかかるので、配信側のシステムが導入されるよりも前からパーミッション取得を開始しておいた方が施策効果をより早く大きくできます。

まずはチャネルごとのパーミッションが乱立していないか確認します。昔から複数の事業を運営している場合は、サービスごとや店舗/ECごとにメルマガが分かれている(つまりパーミッションも分かれている)ことがあるので、統一を図ります。電話番号の利用、DMの利用なども一括でパーミッションを取得できるようにWebの申し込み画面なども再整理しておきましょう。

パーミッションとは規約のようなもので、ユーザーに対して「何の目的で利用するものなのか」を明示します。これによって合意した利用目的以外では使えないものになるんです、これが厄介なポイント。なので一般的に考えられる利用目的は(例えば現時点ではDMなど施策をやっていないとしても)まとめて取得しておくことが大事です。後から追加するのは規約変更になりかなりハードルが上がります。

既存のユーザーにも規約改変でパーミッションを拡大する検討をします。これは企業ごとに法務見解を確認する必要がありますが、こういった規約モノは場合によっては再度ユーザー同意が必要になり、再度同意するユーザーはかなり減るのでパーミッション分母を大きく減らすことにもなり得ます。慎重に検討が必要です。

それとモバイルアプリやSNSなど、単に自社Webページや店頭で同意を貰うだけではダメなチャネルもあります。一般論ですが、アプリでは店頭やWebでダウンロードキャンペーンを張ったり、SNSもフォローキャンペーンを行ったりして数を稼ぐのが初期段階では基本です。これもプランニングをしっかりしておきます。

苦労して取得したパーミッションは簡単に失われる(オプトアウトされる)。人と人との繋がりと同じで、丁寧なコミュニケーションが必要。

最後に、もちろんパーミッションがたくさん取得できたからといって大量にコミュニケーションすればすぐに嫌われてパーミッションを外されます(ユーザーが任意にオプトアウトできることは必須要件になっている)。せっかく苦労してパーミッションを取得しても、

  • ウザがられてオプトアウトされてもダメ
  • かといってコミュニケーションを絞りすぎても効果が小さくなる

そんな難しいバランスで成り立っています。これってほんと人と人との付き合いと同じです(高校生の頃に一生懸命女の子にメール送ってた時代を思い出しますね・・・)。

「どうせメール送るなら、全員に送ったほうが効果が大きいに決まってるじゃん!」

という考えで大量メールを送ってくる企業もあります。その結果一部のファンか、全くメールを開かない人だけがパーミッションとして残るのです。一瞬効果は出るかもしれませんが、中長期を見据えれば、リードを潰していく行為だとも言えます。

そこで重要なのがPersonalied Marketingです。なるべく少ないコミュニケーションで、その人ごとに興味を持ってもらえるコンテンツを提供できれば、理論上嫌われることはなくなります。その究極形がコンシェルジュみたいなものです。このあたりをあまり理解せずにMarketing Automationツールを使い始めている企業もありますが、有効に活用するためにも大事な地盤の話だと思います。