自己研鑽:「ひとまずその領域の本を3冊読め」はなんで3冊なのか?そして知識系とスキル系は本の読み方が違う。

何度か過去にも記事に書いていますが、改めて書籍を活用したキャッチアップについて書いていきたいと思います。新しいプロジェクトに入るときはまずキャッチアップからですが、特に若手だとその業界や業務領域、あるいはテクノロジーについてクライアントと会話ができるレベルになっておく必要がありますよね。
今回はそういった知識系のキャッチアップとロジカルシンキングのようなスキル系のキャッチアップ、その時のほんとの付き合い方についてがっつり書いておきたいと思います。

本はいいぞ。なぜなら書籍というのはある程度体系立って網羅的に書かれているので、全体感を掴みやすいから。

一般論としてよく言われるのが「ひとまずその領域の本を3冊読め」です。これはベテランになった今でも有効な方法だと思っています。

僕が思うに書籍というものは体系立っている特性を持っているので、それが有効であるポイントです。ビジネス書籍である以上はまず目次があって章立てがされています。当たり前ですね。そのため本というのは1冊である程度網羅的に記載がされているものです。極端な例で言うと「財務諸表」の書籍があったときに、ひったすら貸借対照表(BS)のことだけ書かれてて損益計算書(PL)のことは書かれてない、なんてことはないんですよ。

これによって最初にその領域の”全体感”を掴むことができます。詳細に入る前に全体感がわかっていることはとても大事です。これによってどこに論点がありそうなのか捉えやすくなってきます。

ただ本によっては”体系立って”の切り口は様々です。例を挙げると、

  • 時系列や工程で網羅
  • 業務や処理などの種類で網羅
  • 昨今一般的に注目されている課題で網羅
  • 初歩から応用で網羅

なんて感じで、図鑑などと違って著者の意図によって色々な切り口で網羅しようとされています。なので理想は大きな本屋まで足を運んで目次だけペラペラめくりながら目次を眺めてみるといいですね。あまりに切り口がニッチだったり偏りがありそうな書籍はこの段階(入口の段階)では避けるべきです。まぁ今はネットで買うことが多いのでペラペラめくれないことも多いですが、入門書っぽいものを1冊は入れておけば安心です。

3冊も読む理由はなに?それは書籍のバラツキを均すのと、その領域で一般的に言われることを洗い出すため。

さらに「3冊読め」というのはなぜかについても描いておきたいと思います。

  1. 先ほど述べた体系の切り口の偏り均す
  2. 著者の主張の偏りを均す
  3. 複数の書籍で共通して主張されていることは業界・領域の一般論(かも)と捉える

こんなところでしょうか。

①②は端的に言えば、1冊だと著者特有の思想の偏りに引っ張られてしまうのを避ける、それとハズレ本のリスクを減らすということです。一方で③が大事なことで、書籍にはたとえ「その業界を説明する本」だとはいえ、事実だけでなく著者の意見・主張も入ってきます。ロジカルシンキングで言うところのファクトと示唆の違いです。この示唆の部分は「その著者だけが言っている主張」なのか「業界として一般的に言われているべき論なのか」を切り分けられた方がいいです。

そして業界で一般的に言われている”べき論”を抽出することが大事です。もちろん3冊の本だけで全てを鵜呑みにしてはいけないですが、

「これは現在この業界における課題・目指すべき姿のトレンドなんだな」

ということを知っておきましょう。これがプロジェクトの最初にクライアントと課題について話すときに重要になります。

<クライアント>「今他社でも言われているように、弊社でもXXXが課題で・・・ただ競合のXXX社はこれに対策を打ち始めていますが、弊社はまだ何もできていない状態です」

と、クライアントから話し始められることもありますし、

<コンサルタント>「これまでのお話から、御社はXXXに課題を感じているということは理解しました。本当にそれだけを改善すれば全体がうまく回るのかどうかをしっかり確認したうえでプロジェクトを進めたく、昨今業界で課題になりがちなXXXについても御社の状況を伺えますか?」

と、クライアントが言った課題を鵜呑みにしてしまわないためにも使ったりします。最初の”解くべき問い”を外しては後で大いに苦労することが目に見えてますからね。。

ただし知識系と違って、コンサルティングベーシックスキル系は1冊を決めて、それを繰り返し読み直してほしい。

ただし書籍との付き合い方も気をつけてほしいことがあります。ちょくちょくいる若手として、

「ロジカルシンキングの本を7冊読みました!」

とドヤ顔で主張してくる人。このパターンは僕の経験上、勉強に時間を費やしている割にあまり成長が早いとは言えないことが多いです。結論から言うと、”コレ”と決めた1冊を繰り返し読んだほうがいい。

まずここまでに書いてきた「ひとまずその領域の本を3冊読め」は”知識を頭に入れる系”を主眼に置いています。業界知識、業務知識、技術知識、そういった”知ってる or 知ってない”については、最初に本を3冊読むことからスタートして、その先はさらにテーマを絞って詳細が書かれた本や業界メディアの最新記事を読み広げていくことは有効です。

でもロジカルシンキングなど”スキルを身につける系”は最初にいろんな書籍を何冊も読むことはオススメしません。前提としてこういったノウハウには確固たる正解はないため(フレームワークだってどんどん新しい切り口が出てきたり、進化しますよね)、著者によって内容が異なります。正確に言うと共通の部分もあれば違う部分もあるということです。

ロジカルシンキングひとつ取ってもたくさんの書籍がありますが、その考え方ややり方はそれぞれちょっとずつ違うのです。だからたくさんの本を買って読んでも、ちょっとずつの違いに惑わされて情報過多になるわけです。その結果費やした時間のわりに、身に付くものは多くなかったりします。

わかりやすく言うと、2人の剣士になろうといしている人が1ヶ月間かけて、

  • ひとつの流派をみっちり学ぶ
  • 5日おきに異なる流派をたくさん学ぶ

ということをして、1ヶ月後にどっちが強いかということです。1ヶ月という短期であれば、ひとつの流派を学んだほうが強いと思いません?

こういった”ノウハウを自分のものして使えるようになるか”は、一度本を読んで頭で”理解した”だけでなく”自分のものとしてアウトプットできる”状態でなければ学んだとは言えません。アウトプットできるようになるにはひとつの流派/師匠(≒1冊の書籍)をみっちり身につけたほうが早いんです。なので1冊の本を繰り返し読むことを勧めます。

1冊を繰り返し読むというのは、英単語帳のようにただ漫然と3周読めばいいわけではない。業務で使ってみては該当箇所を振り返る。

まずしっかり頭に叩き込む。そして毎日の仕事で覚えたことを使ってみる。もちろん最初からはうまくいかないし「どうやるんだっけ?」ってなる。家に帰ってその箇所を読み返し、また翌日の仕事で使ってみる。初歩ができるようになったから応用の部分も取り組む。そして身についたと思ったことも間を開けて本を振り返り、ちゃんと今もできているか確認する。

こうやって1冊がちゃんと身に付いたとき(普段アウトプットできているとき)、初めてロジカルシンキングを学んだと言えます。

ここまで来たら他のロジカルシンキングの本を読んでもいいと思います。より良いやり方や、新しい観点などを得て、その差分を身につけていけばさらに自分のロジカルシンキングが進化していきます。最初から何冊も読もうとしないことです。まぁ3冊買ってみて、一番自分に合いそうなのを使い込むというならそれは有効です。ただベーススキルは名著と言われる本があり、それは時間が経ってもやはり良本なので、コンサルタント諸先輩に聞いて紹介してもらうのが確実かと思います。

あ、逆に知識本はなるべく新しい本も入れましょう。業界も業務も、ましてやテクノロジーなんて日々進化を続けているわけですから、あまり古い知識を頭に詰め込んでもクライアントには刺さりませんよね。

「ググって勉強してきました」の罠。ググるのは有効だが十分ではない。

ググることも案外勉強になります。リサーチなどで「ググった情報だけじゃ信用できないよ」と言われたりしますが、それはそれで事実として、一方でググることを勉強法としてあまり侮ってはいけません。

特にいわゆるデジタルトランスフォーメーション系の内容であれば、各ツールベンダーからしてもユーザーを”教育”しないと自社製品が売れないので、積極的にノウハウの公開をしています。いわゆるツールベンダー系のブログです。基礎的な内容がユーザー企業にとってわかりやすいように説明されているのでとっつきやすいですし、具体的な施策と絡めた事例なんかも見ることができると具体的なイメージも湧きます。

それと特定のメディア媒体も有効です。無料で見れる範囲は限られていますが、たとえばマーケティングだったらMarkezineなど現在のトレンドをキャッチしやすく、どこの企業がどんな取り組みをしているかもわかったりします。こういったメディアには無料でも登録をしておけば隙間時間にスマホでさらっと流し見できたりするので便利ですね。

ただこういったオンライン記事系だけで勉強してきたと若手に言われると、それはちょっと心配になります。これまで書いてきたことからもお分かりかと思いますが、

  • 体系立った情報ではない
  • トレンドに偏りすぎる
  • 情報提供している側(例えばツールベンダー)に偏りすぎる

という点で、ググっただけだと情報が不足するのです。なのでググるだけじゃない勉強を心がけることをお勧めします。書籍代をケチる若手もいるのですが、、、このご時世強制はできないものの、何にせよ自己投資できない人は早い成長なんて望めないですよね。