特にコンシューマーサービス(BtoC)においては、課題抽出や打ち手の検討を行う際に多かれ少なかれデータ分析を行うことになると思います。一般的には商品・サービスの購買情報と会員の登録情報(デモグラフィック)が中心になるかと思いますが、商材の種類が多かったり事業内容が多岐に渡っていれば横断的に分析することで消費者の様々な動向・特徴を掴むことができます。
今回はそんなデータ分析で陥りがちな罠として、いくつかシリーズで書いていこうと思っています。まずはいきなり深い分析に入ろうとせず、まずは基礎傾向分析を行うことの大切さについて書いていきます。大量データの分析ツールを使ってデータアナリティクスチームが学術的に分析を行うものではなく、どのようなビジネスマンも触れ得るExcelでのデータ分析レベルをメインターゲットとしています。
新しい領域でデータ分析をする場合、あるいはクライアントの仮説を改めて検証し直すような場合は広く基礎傾向から見るべき。
新しい領域でのデータ分析では、まず最初にクイックに基礎傾向を掴むことをお勧めしたいです。
新しい領域といっているのは事業会社にとっては新規に始めた事業や、コンサルタントにとっては新規に入ったクライアントなどを指しています。要は、
「まだ全体の傾向とか感覚的には想像できるけどしっかりと広く分析してないんだよね」
ぐらいの世界観です。コンサルタントの場合はクライアントの「こうだと思っているんだけど」という内容を疑ってかかる場合はフラットに広く分析することになるので、その場合も同様です。
基礎傾向というと、例えば男女比、年齢構成、年間購買額、購買頻度、製品別の売上構成、あるいは買い替え頻度など、広く一般的な内容です。こういった内容はパッと感覚的に「こうではないか」「これぐらいの比率ではないか」という仮説が立つものですし、普段から商品やサービスに触れる際にこういったビジネス感覚を研ぎ澄ましている人にとっては、結果として90%ぐらいはその仮説で当たっている気がします。
何となくこうだろう、だけで深掘り分析を進めると時折大きく見誤る。
でも10%に当たってしまったら?
もしかしたら基礎傾向を定量的に理解しないまま10%に当たってしまい、それに気づかず深掘り分析だけをしてしまうと、一見分析数値だけ見ると正しいようでそこに現れていない「前提」が大きく異なることで大外ししてしまう可能性が高いです。基礎傾向をあまり理解しないままいきなり購買頻度周辺だけを深掘り分析していくと見誤ることもありますし、もしくは何度も大上段の仮説からやり直しになりスケジュールがキツくなるということもあります。
超極端な例で言えば「このサービスは性別関係なく広く使われているし、日本の人口は男性のほうが若干多いことを考えても、サービス利用者の男女差は10%以内だろう」と感覚的な仮説があったにも関わらず、実際に該当サービスを利用している性別比率は「女性が75%」だったりするときです。
これはとても極端な例なのでここまでわかりやすく仮説を外すことはないかもしれません。しかし深掘りする分析の「(無意識なことも含め)前提」となっている事項は、基礎傾向としてデータで確認をしておいた方が安全といえます。
それ以外にもありがちなのが、季節性や最近一時的にあったイベントなどノイズとなりうる事象。その影響度合いも基礎事項としてチェックしておく必要があります。これは例えば競合他社の不祥事で業界全体のサービス印象が一時的に悪くなった期間があった場合、簡単にはその期間を除外した傾向と含めた傾向で大きな差がないことを比較確認すればいいだけのことです。
ただし基礎傾向分析自体は直接の価値にならない。そのためクイックに進めることが肝要。
ただ気を付けてほしいのが、もちろん基礎傾向チェックの結果はまったくアウトプットの価値につながらないということです。クライアントにとって予想外の結果が出ない限りは「まぁそりゃそうだよね」という反応にしかなりません。だからこれはクイックに工数をかけないということも意識してほしいところです。
それと副次的なものとして基礎傾向が頭に数値で入るというのは、今後の細やかな分析を行ううえでモノサシとして役に立ちます。
例えばXXXを選ぶ利用者は60%ぐらいだろう、という仮説が「XXXを選ぶ利用者は67%である」という数値に代わるだけでも違います。経営の有効数字は1桁ですが、データ分析においてはもう少し細かい桁まで意識しておかなければセグメント間比較などをしている際に、わずかな傾向の入り口に気づかないこともあるからです。細やかな分析を進めていくうえで
「あれ、このセグメントだけXXXを選ぶのが75%に増えてないか?もう少し条件を絞るとさらに明確な傾向が出るかもしれない」
といったキッカケをつかむヒントになることもあります。