最近は採用マーケットで慢性的な人材不足(と言われている)こともあって、社員代替としてコンサルタントを雇うケースが多く発生しています。これは
「事前に取り決めた特定の期間で、事前に合意した特定の成果(例えば中期経営家計画の策定、コールセンター改善計画の策定、営業支援システム導入に向けた要件整理など)を目指す」
という成果に対してフィーを払うニュアンスよりも、優秀な人的リソースとしてコンサルタントを雇うことを指しています。
■暫定的な社員代替から、ズブズブ無関係になっていく。
これはもちろん契約期間は決まっているものの、コンサルタントチームで中間報告と最終報告を作成するのではなく、クライアントと共同でチームを組んで一緒に業務を進めるというものです。たしかに成果に対してフィーをもらうケースでもクライアントとチームを組んでプロジェクトを進めますが、この場合は人的リソースとしてみられているので、クライアントのリーダーから見ると同僚、部下に近い存在のイメージでしょうか。最終報告書でなく実務が成果になるのです(よって業務支援と呼ばれたりする)。
実際には最初に記載した人材不足の背景からクライアント企業で思ったように人材採用が進まず、その繋ぎとしてコンサルタントの投入が決まることも多いです。
ただそれは最初のきっかけとして、その結果コンサルタントはバリューを発揮するほどにクライアントから手放せない存在(ズブズブの関係)となり、当初短期契約予定だったにもかかわらず契約延長を重ねていくことになります。クライアントとしても育成やモチベーション管理等の人材責任を負わずに、ガンガン働いてくれるコンサルタントを使っているのが楽になってしまうのですよね。。
コンサルティングファームも(コンサルティングのあるべき姿は置いておけば)企業として売上を上げるために、長期間化と増員を狙っていくことになります。
■業務支援の増加はコンサルティングの需給の変化から。
人材不足によって社員代替の需要が増える、そして汎用性の高いコンサルタントが(割高だと思っていても)契約を獲得する。特に戦略ファームをはじめとして以前はあまりそういった案件の比率が高くありませんでしたが、どんどんその比率が増えてきているのはなんででしょう。
クライアント企業の人材不足以外にも理由はあると思います。昔はコンサルティングファームというと”高価だからいざというときに難易度が高いことをピンポイントで依頼する”というイメージがありましたが、最近は日本社会でもコンサルを使うことが一般化してきて、心的ハードルが下がったとも言えます。これは良いことですね。
一方でコンサルティングファームが日本市場で規模拡大、つまり社員数が増えかつ歴史を重ねてくると”コンサルティング経験者”が世に溢れてくるようになりました(経験年数が短かったり上手くパフォームしなかった人材も多数流出するので、経験者といえどめちゃくちゃ当たり外れがある)。そしてクライアントと呼ばれていた企業にも既にコンサルタント経験者が多数いたり、ノウハウが普及されつつもあります。
■コンサルティングファームの規模拡大が生む歪み。拡大路線はサスティナブルなのか。
さらに他方ではコンサルティングファームも規模拡大が進んできて、結果として大人数を採用するために人材の質が薄まっています。クライアント企業がコンサルっぽいことを自前でできるようになってきて、コンサルティングファームの人材の質が下がっている、その両側面から昔コンサルタントが行っていたタイプの仕事は減ってきているのだと思います。
コンサルタント自身が業務支援系案件をやりたいかやりたくないかという議論は別として、コンサルティングファーム各社にとってシステム関連以外でも長期で大人数案件作っていくために、こういった業務支援がありがたい存在となっていることでしょう。売上ノルマを持っている職位(僕もそう)になると、こういった案件で売上を安定させつつ、別の面白い案件を挟んでいくスタイルを取っていかないと売上目標達成の難易度も高くなってきています。総合系ファームでは売上目標というのが、そもそも少数精鋭案件を回していても(人数規模を出さないと)達成しない数字に設定されてしまっています。
需給の変化から増えてきた業務支援。このコンサルティングファームの構造変化は、「もう高いフィーを払ってわざわざコンサルタントはいらない」という方向に向かっていき、いつか破綻を迎えるのでしょうか。それは僕もこれから考えていきたいですね。
次回はこの業務支援において、チームメンバーの”クライアントへの見せ方”を考えなければならないことについて書いていきたいと思います。続きの記事はこちら。