■そもそもPMOの日本における浸透度はどれぐらい?
IT関連業務についてはプロジェクト制をとり、PMOを設置するカルチャーは浸透していると思います。一方でITを一歩離れると、特にトラディショナルな企業ではPMOが浸透していない場面にも出会います。
「進捗報告や課題の管理なんて各チームで自分の分は担当するのが当たり前だろ!」
「そんな各チームでできるような管理業務について、わざわざ新しくチームを立てるなんてリソースの無駄だ!そんなことやるなら開発作業をやってくれ!」
「そもそもPMOって何?なんの略?」
といった声も聞こえます。事実として僕が担当した大手自動車メーカーのR&Dでは一言目に「PMOってなに?」って言われることが多かったです。ソフトウェアが関連する領域なんですけどね・・・
特に今までゼロからノウハウを生み出してきてモノづくりを行っている製造業のR&D、さらに人材観点でも新卒から自社の濃い「職人のやり方」を肌で覚えて来られた方々がほとんどで、中途採用者が少ない会社で聞こえてくることが多いです。
そういったところでは定常プロセス化された進捗管理・課題管理手順がないことも多いですし、プロセスだけはあっても定着していない(実際にその通りスムーズな運営がされていない)こともあります。もしくは阿吽の呼吸で「いつも定常的に開発している物は黙ってても作れる」場合もあります、職人ですね。でも残念ながら「新しい領域における開発」は死ぬほど苦手です。笑
こういったところではまずプロジェクトマネジメントのノウハウ・プロセスを定着させるところに注力することから始まります。
■PMOとしてコンサルタントを導入する価値。
コンサルタントの立場から言えば、PMOの管理業務を淡々と遂行するだけであれば、コンサルタントを始めとして外部の人間をわざわざ雇う必要はでしょう。逆にアウトソースで自社より人件費を安く済ませるなら価値があります。
一方で管理プロセスが標準化されていなければ、プロセス策定だけ外部の経験豊富な会社に、自社に合ったプロセスを標準的に策定してもらうのが良いですね。長年かけて世界中のプロジェクトたちが必死に考えた結果PMBOKができているので、基礎的な部分は既存資産を使いましょう。これを編み出すのに時間をかけるのは無駄です。
でも会社のカルチャーや対象事業、プロジェクトの規模によって管理する粒度・深さは異なってきますので、それを適切なレベルに落とし込む作業は外部の専門部隊に任せた方が早く軌道に乗ります。このようにそもそもPMOのノウハウがない企業ではコンサルタントなどの専門家から最初に手ほどきを受けることが早道です(書籍を読んでも我流になりがちで、シミジミしたプロセスが策定されない)。
でも一番難しいのが定着。
コストはかかりますが、最初運用が定着してくるまではコンサルタントに継続サポートしてもらうのが正攻法です。こういった直接モノ・サービスの開発行為ではない”間接業務”を毎日の運用レベルで導入させるのはカルチャーチェンジに近く、忙しいしめんどくさいと反発も受けます。ガミガミ言うだけの部課長では浸透させるのが難しく、まずは工数をかけて現場メンバーを手取り足取りサポートするのが良いのですが(代行するとやらなくなるのでダメ)、これには工数もかかりますしコミュニケーション力も問われます。
プロセスで安定した以降は自社メンバーで淡々とやっていけば良いと思います。単純作業レベルまで定着すれば、情報の集約と資料の作成ぐらいは誰でもできることです。
お金を持っている企業は単純なPMOの管理作業までコンサルタントにやらせるケースもありますし、コンサルティングファームはそれで儲かるので受注したりもしますが、管理作業をやらせるだけならもっと節約しましょう。
「やっぱり定常作業もコンサルに任せるとうまくいくし」
と言ったクライアントが過去にいましたが、お金のかけ方はメリハリが必要。コミュニケーションや要領の良さでサクサク仕事をしてくれるかもしれませんが、成果に対してはあまりに高い買い物です。。ぶっちゃけやっているコンサルタント側も”つまらない仕事”なわけです。