“自社EC比率”という言葉を耳にすることがあると思います。
EC事業をやるにあたって、直営でECサイトを構築して販売をすることもできますし、楽天やAmazonといった外部のECサイト(モール)を活用して販売を行うこともできます。ここではこれらをそれぞれ”自社EC”、”外部EC”と呼ぶことにします。
ある程度の規模になると自社ECと外部ECを同時に運用しているのが普通になりますが、その時にEC事業全体における自社ECの売上割合を”自社EC比率”と呼んでいるわけです。
■自社EC比率を上げると何がいいの?
自社EC比率を上げたい上げたいというフレーズはよく聞こえてきても、そうすると何がいいんでしょうか。そのためにざっくりまずは自社ECと外部ECそれぞれのPros/Consを理解する必要があります。
<Pros ~良いところ~>
●自社EC●
- 利益率が高い(中間マージンを取られないため)
- 会員登録してくれた場合、手に入る個人情報が多いため分析に活用しやすい
- 売上拡大に向けた施策の自由度が高い
●外部EC●
- モール自体に集客力があるため、商品が人の目に触れやすい
- 販売動向がまとめられたダッシュボードが利用できる
- 初期費用が安く、システム管理がほとんど不要
- AmazonのFBAのようにモールの倉庫に在庫すると短い配送リードタイム、高い出荷キャパシティを容易に実現できる
<Cons ~悪いところ~>
●自社EC●
- 認知度が低いとそもそもサイトアクセスが低い
- サイトアクセスを増やすために必要な広告等のコストが高い
- 初期費用が高く、自分たちの予算でシステム管理が必要
●外部EC●
- 他の出品者と価格競争になる(特に自社製品ではない場合)
- 卸売事業もやっていると、低価格で購入して転売してくる競合も多い
- モールの流行り廃りといったトレンドに流される
- 打てる施策の自由度が低い
■自社ECと外部ECのどちらに注力すべきかは、事業のフェーズによって違うはず。
これらのPros/Consを見ているとなんとなく分かる通り、一概に全部のEC事業者にこれが当てはまるわけではないと思います。特に違いが出ると考えているのは、事業のフェーズ。
それが事業を始めたばかりの創成期なのか、認知度に従ってどんどん伸びていく成長期なのか、良くも悪くも売上が安定している成熟期なのかによって異なるということです。
例えば創成期。この時期はまだまだ自社が知られておらず売上が小さいため、必然的に予算も小さいです。これでは認知度向上に向けた広告に高い予算など積めませんし、勝手に認知度が上がっていくわけでもありません。だとすれば自社ECよりも外部ECの出品に力を入れ、モール自体が集客力を持つ中で、広く検索に引っかかるようにした方がアクセスが望めます。
実店舗に例えたイメージとしては、同じ予算を使って駅から非常に遠い住宅地の片隅に路面店を出すか、大型ショッピングモールの隅の隅に小さな店を出すか、という感じでしょうか。例え端っこの方でも大型ショッピングモールに出店をした方が、店の認知度が低くても一定量の人が入店してきます。
もちろん大型ショッピングモールは家賃が高いので利益が低くなりますが、まず知ってもらえなければそもそもの売上は望めません。
■事業の成長フェーズに合わせて自社EC比率を高めていく。
このような形で、
- ECの創成期はメジャーなモールを活用して外部EC比率を高く、
- 成長期は外部ECと自社EC半々ぐらいを基本に、売れているサイトに投資を強めて売上を伸ばし、
- 成熟期までに自社EC比率を高めて、より高い利益率を確保、顧客ロイヤリティーの向上を狙っていく
というのが定石と考えています。なので事業のフェーズと各サイトの特性を理解して、中長期的な成長戦略を立てる必要がありますね。
もちろん実店舗や自社製品が既に高い認知度を誇る場合は、自社サイトを立ち上げてもオーガニックサーチでアクセスがある(要はGoogleなどで勝手に検索され、サイトにアクセスされる)ために初期から自社ECを活用できる可能性もあります。
既に大きな事業を持っている会社がEC事業に乗り出す場合は、最初から自社ECをメインに大きな投資で勝負に出た方が良いかもしれません。