前回に引き続きPMOの重要な役割について。今回は特にクライアントやプロマネの意思決定を加速させるために、具体的にどのような手順を踏む必要があるのか考えていきます。
ここからはかなり実践的な内容で、僕の経験ではこの方法でしっかりと成果につなげることができています。むしろコンサルティングにおいて、このステップは肌に染み付いておかせる必要があり、この理想論を実現する際に発生する様々な壁を越えることに注力しなければならないのが実際です。
■意思決定させるとはA or B or Cという選択、さらにはYes or Noのクローズドクエスチョンに持ち込むこと。
これらを解決するために戦略的PMOは、
- 意思決定の判断ロジック(何を判断するか)を組み立て、
- その判断に必要な情報(何がインプットにあれば決められるか)を特定し、
- それに必要な情報を正確に収集して真因を突きとめ、
- 意思決定に必要な粒度に整理した上で、さらに何が推奨案なのか比較検討し、
- プロマネに意思決定を求めるのです
逆にプロマネであれば、何が全体で目指すべき方向なのか見定め、意思決定に何が必要な情報なのか判断ロジックを組み立て、それを集めるよう指示を出す。
そして大切なのがスパッと決めるということですね。
「ここまでやるのか・・・」
と言いたくなるかもしれませんが、まずこれが僕の理想形です。ただし意思決定にも大小ありますので、シンプルでわかりやすいものや、インパクトの小さいものはメリハリをつけて簡略化します。でも頭の中でステップを飛ばすことは基本的にはありませんね。
■意思決定させるとは相手に合わせてA or B or Cという選択肢を絞り込むこと。
意思決定者の職位や、判断力、判断内容への理解度などを見極めながら、意思決定の選択肢を提示する粒度や、絞り具合までを検討します。
事業企画をする、あるいはもっとわかりやすく注文住宅を建てる場合のように
「クライアントの思いつかなかったたくさんのアイデアや、たくさんの選択肢を提示することがとても良い」
というパターンもありますが、企画構想を過ぎて既に実現に向けたフェーズ(つまり実行プロジェクト)まで来ていると”問題解決”のために意思決定をする場面が多いでしょう。このような場合は”早急に精度よく問題を収束させること”がゴールであって、無駄に選択肢を与えることは”判断の迷い”を産むばかりです。
なのでまずは現場レベルで選択肢を絞ります。もう少し具体的なイメージで話をすると、クライアントの役員や部長に意思決定を求めるのであれば、その前に課長クラスのクライアントメンバーまでで現実的ではない案を切り捨てます。もちろんそこまでには広く案を検討したうえで、議論して削り落とすということです。
そして2~5案に絞るのですが、僕はだいたい人間の心理としてしっくりくるように3案に絞るよう狙います。そして推奨案がどれかを明示します。その時に「100%この案だ!」とならないことも多く、その人が何を重視するかによって異なる”決めの問題”になる場合もあるでしょう。そんな時でも「私なら○○○を重視しこの案を推奨します」というのを腹に持っておくべきです。
そしてそれらの案をスライド1枚にします。サマリーでも構わないので必ず1枚です。なぜなら同時に映せるスライドは1枚で、複数候補案が同時に投影されていないと意思決定者が比較検討しづらいからです(もうひとつの案はなんだったっけ・・・となり集中できない)。
ここまでやってから意思決定者である役員や部長に話を持って行きましょう。そこでもし「このリストに載ってないが他にもこういう案は検討したのか?」と言われても、「それはもちろん検討し、XXXの理由で除外しています。今回は効果の高い3案に絞って持ってきています」と言えば良いことです。