事業分析:ECにおける事業単体の売上モデルを考える。~モデルの粒度編~

売上におけるシミュレーションモデルを考えていきたいと思います。今回はEC事業単体の売上モデルを策定しますが、ベースの考え方はどの販売チャネルでも共通であると考えます。

売上シミュレーションが必要になるシーン、ありますよね。中期計画を立てるとき、来年の1年間の売上計画を立てるとき。

こういう不特定の要素が入るシミュレーションについて、正直僕はどこまでいっても最後はエイヤの世界であると考えています。マーケットは非常に複雑多岐な要素が影響しあって構成されており、そのすべての要素を加味することはできない以上必ず「推測値」が発生します。それがエイヤと言っている意図で、そしてエイヤが混ざっていてもいいのです。ただしそれがある程度要素分解された細かい単位で推測値となることが重要で、あまりにも粗い単位で推測を入れると精度が下がります。

シミュレーションは意思決定には必要な材料ですし、計画に対して色々な質問を受けても論理的に説明ができ、かつ実際に達成していけるものである必要があります。まぁフェルミ推定の延長みたいなものですね。

■シミュレーションの粒度はどこまで必要?

実際に事業計画を立てていらっしゃる方々、どのように考えているでしょうか?

昨年の実績に昨今のトレンドからエイヤで上昇率をかける?現時点で見込みのある受注と、それにガッツを追加して来年の売上を予測する?いやいや、大企業で予算があるからだから外部のコンサルを雇ってちゃんと細かく作らせるんだ?あるいは、トップダウンで無茶な売り上げ目標が来るから計画なんて計算すらしません。。とか。。

どこまで細かく深く計算すべきか、という論点が最初にあります。ただそれは5カ年の中期計画なのか、直近1年の計画なのかによっても粒度が違うでしょう。ただし上司が納得さえすれば最低限の細かさで手間をかけずに作ればいいんだ、という考えはNGです。根拠を持って必要な粒度を定めてから着手しましょう。

たまに

「僕はエクセルが趣味で大好きなんだ!」

という人がいて、なんでも細かく作ることに喜びを感じる場合がありますが、これも同様にNGです。一定以上の細かさでシミュレーションモデルを作っても、細かく分解した要素(例えば特定の商品の日別の売上変動など)に対して正確な数字を代入することが難しくなるからです。日別の売上というと、言ってしまえばその日の天気などによって結果が異なるため正確な金額予測値を入れることなどできず、事業全体の計画を立てる上では要素が細かすぎます。それが週だったり月単位であれば日ごとのバラツキもある程度吸収されて、昨年の実績数値からおおよその推測値が入れられるというわけです。

■僕が考える粒度の決め方とその理由。

僕は以下の理由からある程度の細かさを持って長く使えるモデルを作成することが良いと考えます。

  • シミュレーションモデルはその場限りの使い捨てではなく、毎月の売上実績を反映しながら会計年度の着地に向けて計画を更新し続ける必要がある
  • 売上(KGI)だけでなく、実際に事業を管理していくために、もう一段細かくブレークダウンされたKPIを策定する必要があり、KPIレベルにブレークダウンされた計算を行えばKGIとKGIが明確に連動して管理できる
  • 事業会社では日々売上向上に向けた施策検討を行うが、その施策効果を概算するのに、シミュレーションモデルのパラメータを弄ればサッと計算を行うことができる。施策レベルでは事業計画より細かい計算になるが、ある程度は事業シミュレーションモデルを転用できることで、施策毎の計算でロジックがチグハグせず、一貫性が持てる
  • ある程度細かく計算することで「ここはこういう前提で」という仮定を置くことになるが、計画と共にこの前提をマネジメントと合意することにより、止むを得ず前提が変わって不利な状況になった際、不毛な追求を受けづらい

といったところでしょうか。

具体的には事業や運営の仕組みよっても異なるため一概には言えませんが、次回からは僕が実際に行ったシミュレーションを例に説明をしていきたいと思います。