システム導入:製品選定における最後の落とし所の作り方。~短期間ならベストプラクティスを重視する編~

システム選定の落とし所をつくる、前回はコスパだけで製品を選定するのではなく、予算感や、現在の業務のレベルから(コスパが良い中で)適したレベルの製品を選定するのが大事だと書きました。

デジタルに限ったことではないですが、昨今は何の業務にもシステムが登場します。むしろ間も無く「自動化できない部分だけ人間が業務を行う」なんて...続きはこちら。

■それだけでは観点が足りない。服と同じで自分に合う・合わないの観点がある。

まぁそこまではわかるわ。って感じですよね。

理屈上はそうですが、”必要な要件を満たす”という基準はなかなか定量的に測れないので、そこに難しさがあります。具体的な例も交えて見ていきましょう。

“必要な要件を満たす”かどうかを確認する方法について。基本的には要件の洗い出しをして一覧を作り、それを製品ベンダー各社にfit & gapしてもらうことで要件を満たす製品に当たりをつけます。(これがRFP提示の段階)

ただし要件一覧が粗いと、どの製品も「できます」と回答してくるだけであまり差がわかりません。細かく要件出しができていると、「標準機能の設定で実現できます」なのか「実現できますが(プログラミングを伴う)開発が必要です」なのか分けて回答してもらうことができます。パッケージ製品はフレキシブルに設定(ポチポチとマウスで開発可能)できるように作られていますが、設定の範囲でどこまで要件に合うのかは製品によって異なります。設定でできなければプログラムを組むコストをかけてやるか否か選択しなければなりません。

つまり標準機能の設定で自社の要件を多くカバーできる方がコストがかかりづらいということです。最近は中小企業向けの安価にスタートできる製品も沢山あり魅力的ですが、ある程度複雑な要件を持つ企業の場合は設定の範囲に収まらず、初期開発コストやライセンスコストが嵩んでいき、(¥XXXから利用可能!と書かれてる激安価格に対して)かなり高コストになることも多いです。

なので見積もり時の要件出しは、勘所を押さえてある程度細かく提示することが望ましいです。その際メリハリをつけて、こだわりのない要件は簡略的に書いていかないと見積もりまでにかなり時間が掛かってしまうので注意です。細かければ良いという物ではありませんが、見積もり取得時にある程度細かく要件出しができていると、結果的に発注後の要件定義フェーズで使える物なので工数削減にもなります。

■理想はそんなにゆっくりRFP作りができないことも多い。ビジネスは止まらないからだ。

ただし経営マターで「すぐ導入しろ!X月までだ!」と無茶苦茶な期限でお尻が決まっていることがあります。これはコンサルタントが受けるケースが多く、本来BPR(業務プロセス改善)等をお題に仕事を受け、その結果ひとつの打ち手としてシステム導入をするかどうかを決めるものですが、いざプロジェクトに入ってみるとなぜか「XXXシステムをいつまでに稼働させる」ということだけは決まっていたりします。。

結局のところ無茶な期間で製品選定をすることになるので、こういった場合はベストプラクティス(世の中の多数企業で磨いてきた効率的な業務プロセス)型の製品を中心に検討するほうがリスクが低減されます。ベストプラクティスに合わせていく、ある意味システムに業務を合わせるというステップでBPRを行なっていく手法です。システムはただのツールでしかないので導入そのものが目的になることは悪ですが、ベストプラクティスの乗った製品に業務を合わせることで60点の合格点は担保する、という明確な目的があればその限りではありません。

業務を見直してからシステムに載せるステップの方がより高得点が狙えますが、ベストプラクティスの載った製品に合わせることもひとつの手段ではあります。

以前はよく会計のSAP、営業だとSalesforceなどがわかりやすい例です。やはり多数企業に選ばれるのには理由があり、その結果製品にもノウハウが蓄積されていきます。一方で概して高価格帯ですね。。

最近ではユーザー自身がシステムをセットアップ(ソースコーディングを前提としない)できるように設計された製品も多く、そういった製品は自由度の高さを重視しています。自由度の高い製品は営業支援や新規出店管理など(あまり思いつかなかった・・・)の”工程管理”に近い系統の業務に多く、これらには”標準的にはこうした方がいい”というベストプラクティスが薄いので、結果として安く簡単に導入できたとしても、想定していた効果が出ないことがあります。

ベストプラクティスとコストパフォーマンスを合わせて考えると結構選択肢は絞られてくるもので、検討期間がないシーンでは有効な場合があります。このとき最も重要なのが「製品の意思決定軸としてベストプラクティスが重要であること」を意思決定者と事前に握っておくことですね。事前に軸を握ることは物事の選択をする上でとても重要な基本事項です。