上司と部下の関係:チームパフォーマンスを上げる上司・部下のスキル ~その2~

一般的に書籍を漁ってみると、どうしても部下に向けたスキルについて書いてある本が多いですね。それは「受け手」である部下の方が人数が多く、一般に答えを求めて四苦八苦していることが多いからでしょう。でも今回、まずはあまり注目されづらい上司のスキルから説明していきたいと思います。

改めておさらいですが、上司が大きな方針を指示するだけで、部下は高い成果を挙げてくれるとチームパフォーマンスが高くなります。それを「阿吽の呼吸...続きはこちら。

さて、普段の業務の中で上司が部下に向かって出す指示について、以下の3点を意識することが必要と書きました。

  1. その部下が大まかな指示から詳細を自分で考えるようなマインドを植え付ける
  2. その部下が指示を噛み砕けるレベルまで指示の粒度を調整する(足元の成果を担保)
  3. その部下の成長に沿って指示の粒度を”大まか”にして考える割合を増やしていく

今回はそれぞれを細かく見ていきたいと思います。

■大前提としてマインドが肝。自分で考えるマインドがない人たちも多い。

自分で懸命に考えて成果を出そうとしている部下は、自分のチームにどれぐらいいますか?正直コンサルティングファームでも、求めるレベルでマインドを持っている部下は少ないかもしれません。

実際は昨今の大規模コンサルティングファームで、自分で考えようとする人が減ってきています。すぐに「どうしたらいいですかね?」と聞いてしまったりとか、今話している指示概要の次に具体的な作業の説明が来るだろうと思って待っている人は多いですね(つまり7とか8ぐらいの指示がもらえると勘違いしている)。

その背景として大量に採用している中途入社(新卒や第二新卒も多いのですが、彼らは社会に出たてなのでこれからマインドを醸成するとして)が挙げられます。もちろんポテンシャルや業務知見をもって採用されているのですが、それでも「入社したからすぐにコンサルタントの働き方ができる」わけではありません。

それでもある程度素地のある人が採用されるべきで、僕が言っているのはそのレベルにもない人材が多いということです。(自分のことは棚に上げてますが・・・)

以前は中途なら即戦力になりうる、かなり優秀な人材を採用していたのですが、大量に採用しようとしている現在は採用ハードルがかなり下がっています。言葉は悪いですが、課題提起だと思ってハッキリ言うと「ザル」です。

世の中に100人の人がいる内に優秀が何人いるか、という割合は今も昔も変わっていないので、それでも採用数を増やそうとすると普通レベルの層に手を出すことになります。その結果ファームは規模拡大しても、現場の中間管理職はその人材でチームパフォーマンスを出すのに苦労するわけです。半ば僕の愚痴ですが・・・笑

中途や第二新卒で入ってきた人に対し「今までにないレベルからの底上げ」が必要になったことで、中間管理職はかなり苦労しています。。

そもそも上司がいかに適切な指示を出したとしても、「自分で考えて出した成果がバリューである」という心構えがない場合は、チームのパフォーマンスも半減するわけです。そんな人たちにはまずマインドを変えてもらうことが重要、というか大前提となります。

■1.部下が自分で考えるようなマインドを植え付ける。

まず1点目。マインドの植え付けですが、これは一朝一夕では身につくものではないので根気よく指導を続ける必要があります。なので2、3の指導を実践しながら少しづつ1のマインドを植え付けていきましょう。1ができてないから2、3ができないというわけではないのでご注意を。

さて上記のように「自分で考えるというマインドが植えつけられていない」部下は3の指示で10の成果を出していることに、自分で満足してしまいます。10の成果が出ているから自分は優秀だと。

でもそれは「7の指示を出している」上司が負担を背負って、10の成果を出せるようにサポートしているのです。言葉を濁さずに言えば、「部下が優秀じゃないので、仕方ないから手厚く指示を出してあげている」わけです。

それがチームにとって良いことではない、指示を厚く出されている自分は優秀ではないという危機意識を持ってもらうことがまず第一歩。そして自分で積極的に考える割合を増やしてもらいましょう。それは部下にとっては”仕事を任せてもらうこと”そのものです。

あくまで一般論ですが、部下は「もっと自分に仕事を任せてほしい」と求めてきます。やる気があれば当然のことです。基本的にチームパフォーマンスを考えれば上司も「部下に仕事を任せたい」はずで、利害は一致しているように見えます。

ですがここまで説明したように「7指示しないと10の成果が出ない人には、3の部分しか仕事の裁量を任せられない」のです。それはハッキリ説明していいのではないでしょうか(感情的な叱責ではダメですよ)。結局、まずは言葉で伝えるのが一番早いでしょう。そのうえで、なんらか実戦で「マインド不足」を身にしみてもらうのが一番です。

何より「もっと仕事を任せてほしい」と部下に言わせた時こそ、このマインドを植え付けるチャンスと言えます。僕はこのマインドが結構キモだと思っていて、マインドのない人間を自然と上司の指示コントロールで成長させるには骨が折れます。やはり部下の自律的な成長意識が起爆剤なのです。

そして先ほども記載したように、残念ながら最近のコンサルティングファームは、このマインドすらない人もそれなりにいます。お客さんからすると(こんなこと言うと怒られますが)そのくせ単価が高いのです。笑

「考えることによる成果」が出せない人は、その上司がお客さんからクレームをもらったりします。もちろんその部下がお客さんから何かリクエストを受けた際(お客さんからの依頼は往々にして粗い)、その期待値を”おもんばかることができず”成果を出せなければ、直接怒られたりします。