チームマネジメント:育成においてメンバーに意識させるのは同時に3つまで。~後編~

前回、指摘は大きく2種類に分けられることを記載しました。

  1. 資料の内容に対する指摘
  2. メンバーの仕事の進め方・考え方に対する指摘

という2種類ですね。今回はそれに基づき、2の指摘は数を絞って着実な育成を行うための考え方を記載していきたいと思います。

前回の記事はこちら。

他のシニアマネージャーも言っていたのですが 「成長しようと懸命に食らいついてきたり、色々学びとろうと自ら聞いてきたりしないヤツは、べ...続きはこちら。

■改善意識をさせる指摘内容は、業務中にふと思い出せるほど具体的でなければならない。

①の資料コンテンツに対する指摘をしているとあれやこれやと言いたくなるもので、②の仕事の進め方についても片っ端から直して欲しくなります。でもそこはグッと我慢しましょう。そして優先度の高い(直近の業務で活かせて、かつ改善幅の大きな内容から)内容から3つを改善意識すべき点として指摘します。

そして指摘内容は具体的であるべきです。悪い例だと、

「ロジカルシンキングの基礎がなってないですよ、ロジカルシンキングをやり直してきて」

というのはダメです。ロジカルシンキングはコンサルタントをやるうえで必須ですが、一方で一通り習得するのにはそれなりに時間もかかります。1週間やそこらではありません。具体的と言っているのは自分がジュニアの頃を思い出して、”普段業務をしながら該当するシーンに出会ったら、その指摘を思い出してアクションに移せるレベル”の具体さです。初歩的なことですが例えば、

「パワポでスライドを作成し始める前に、まず方眼紙にスライドの構成を書き出して練ってからPC作業に移りましょう」

という指摘であれば、メンバーがパワポを新規作成するタイミングで「あ、そうだ、まず方眼紙に頭の中を整理しなきゃ」と改善アクションにつながるのです。特に基礎ができていないメンバーなら、これぐらい具体的なレベルでないと改善意識を持ちながら業務に当たれないかもしれません。

■改善意識を3つ持たせることを繰り返した方が、結果改善の定着が早い。

それともちろん、指摘した次の日には違う3つの指摘をしてはダメですよ。笑 大体1週間かけて改善が進んで来たら指摘を追加していくのが良いでしょう。3つのうち改善ができたものだけ差し替えていく形にします。改善ができていないようなら次の週も継続して改善意識をさせていくということですね。

多忙なプロジェクトにおいて1週間の間に改善意識が薄れていく場合は、デスクに3つをメモにして貼っておかせるぐらいしても良いと思います。

当然ながら未熟な人材ほど、上位者から見ると改善しなければならないことがたくさんあります。それを気づいたことから片っ端から伝えていっても当然ながらすぐに吸収でき、定着するものではありません。そんなにいっぺんに頭には入らないのです。大事なのは”定着”です。

指摘したことをその場で頭では理解できても、結局定着しなければ今後の業務は改善されません。早く多くのことを定着させ急いで60点の合格点を目指すならば、3つずつの定着を繰り返していく方が結果的な成長速度は早いように思います。指摘をする側もされる側も、いつまでも同じことを繰り返し指摘し続けるより精神的に楽でしょう。

もちろん60点から上を目指して成長させるにも有効な方法ですが、その場合は合わせてもう少し中長期的な育成プランも組んだ方が良いですね。それについてはまた別の機会に書いていきたいと思います。

■3つ同時に意識し続けられない人もいる。それでも成長させる為には同時に意識させる数を減らす。

ダメなら2つ、1つと減らしていくしかありません。結局大量の意識を持たせて1つも成長しないよりは1つずつでも成長が重なる方が進捗はあります。でもその分だけ時間と指導工数はかかりますよね。

弱肉強食のコンサルティングファームたるもの、それでいいのでしょうか。これまでは育成効率を重視し、指導という工数を投資する人と投資しない人を決めることでアウトプットと優秀な人材の排出(その土台に挫折する人材が多数いても)を担保してきました。この考え方は選択と集中に反しています。

コンサルティングファームは育成が手厚いと言えど、基本的には”本人の自主性あってこそのもの”です。様々なトレーニング制度も、メンター制度も、上司からのフィードバックも、全ては本人が成長を切望して自ら学びもがき続けることが前提です。それがあってこそ、コンサルティングの世界で若くして高い角度の成長を手に入れることができます。さらにいえば向き不向きの素質も見定めて投資先を選定しますので、努力をしても求められるレベルに達せなければ淘汰されるべきなのかもしれません。

そんな中で、ここまで手厚くやらなければならないのか!?そんな疑問が湧く人もいるかと思います。はっきり言って僕は湧きました。しかし拡大路線をたどる総合コンサルティングファームにおいては、ダイヤモンドを選べば良いほど原石は集まってきません。どんな鉱石もダイヤモンドにまで磨き上げる育成スキルが求められるのです。

それを理解してファームにいる人は、その事実を受け入れて”レバレッジの効く育成プロセス”を実行する方が懸命と言えるかもしれません。