チームマネジメント:育成においてメンバーに意識させるのは同時に3つまで。~前編~

他のシニアマネージャーも言っていたのですが

「成長しようと懸命に食らいついてきたり、色々学びとろうと自ら聞いてきたりしないヤツは、べつにわざわざ育ててやろうとは思わない」

これは冷たいですが、コンサルティング業界においては正直僕もその通りだと思います。いやその通りだと思ってきました。

■プロジェクトアサインの需給バランスが崩壊している。優秀な新規アサインメンバーの確保が困難に。

でも近年、その状況は変わったのだと考えています。大量採用で人材の質は薄まり、はっきり言って「なんでこの人採用したん?」という中途入社社員も結構います。その一方でファームの売り上げは活況です。だからこそ大量採用をしているのですが、それでも尚クライアントからの引き合いは多くてもファームのリソースが不足しているような状況。

となると残念ながらかつてのコンサルティングファーム内のアサイン需給バランスは崩れてしまい、パフォーマンスが良いメンバーは次プロジェクトの引き合いが多数来るため選択権が得られる、というわけではなくなりました。現在のプロジェクトが終わりそうになると、即座に会社都合のアサインをされがちです(会社目線で重要なプロジェクトに回される)。

プロジェクトを回す立場から見てもメンバーをアサイン面談で選定する余地はほとんどありません。言葉を濁さずに言えば、たまたま空いている人員に片っ端から面談をしていって、なるべくまともそうな人をアサインするのがやっとな感じです。プロジェクト要件にスキルがマッチする”当たりメンバー”が出てくることは少なく(他プロジェクトから手放されないし、出てきても面談対象に上がらずにどこかにアサインされていたりする)、もはやその月の中途入社メンバーを一斉に面談しにいくような状態です。クライアントには申し訳なく思うほど。。

となると必ずしも優秀でない人材であっても、早期育成によって最低合格点の60点にいかに早く持っていくかが重要な論点になってきます。最初に書いた”自ら成長できる人材”だけを重点育成するわけにはいかず、手取り足取りになっても全メンバーの底上げを行わないとプロジェクトが回らないのです。

■急速成長させたくとも、人間が業務しながら常に意識できるのは同時に3つまで。

僕はこの市場の中で、”伸びるやつだけ伸びればいい”という世界から”まばらな人材を底上げして売り物にする”という意識転換を余儀なくされました。市場の方向性が変わったなら仕方ないです、イライラもしますがそれが嫌ならブティックファームに行くしかありません。

僕は、人間は頭の良し悪しに違いはあれど行動中に常に意識できるのは3つ程度ではないかと思っています。つまり仕事においては、普段業務に取り組む中で改善に気を払い、自分にそれを定着させていけるのは同時に3つまでということです。

今回特にジュニアなメンバーにフォーカスしてみましょう。

よくあるシーンですが、メンバーが資料をドラフトしてレビューに持ってきたとします。しかしそれが「オイオイ・・・」と言いたくなるほどイケてない資料。そうするともう片っ端から指摘したくなります。赤ペンなら紙が真っ赤になるほど。

後ほどクライアントに提示する資料なら、もちろんチームとして妥協することはできません。修正すべき箇所を全て指摘すべきですし、逆に指摘して修正したものでなければクライアントに出せません(アウトプットに妥協してはならない)。

■指摘には大きく2種類があり、一度に全て指摘すべきものとそうでないものがある。

でもその指摘をする内容は大きく2種類に分けられるのではないでしょうか。

  1. 資料の内容に対する指摘(メッセージラインが言うべきことを端的に表現していない、図表のストラクチャーがロジカルに整理されていないなど)
  2. メンバーの仕事の進め方・考え方に対する指摘(資料全体のストーリーラインから先に考えていない、読み手の前提知識を考慮していない、ロジックの組み立てが甘いなど)

とりあえず期限までにクライアントに資料を提示するためには①の修正を対応し切ることが必要です。でも今後一緒に仕事をする中で同じような指摘を減らしていくため(再発防止)、つまりメンバーのスキルを上げていくためには、②の仕事の進め方・考え方に対する指摘が重要なのです。

さて、ここで話を先程の“同時に3つしか改善意識を持てない“というところに戻します。つまり言いたいのは、②の仕事の進め方に対する指摘は同時に3つに絞るべきということです。

後半に続きます。