前回は人材を解雇することの意味合いについて書いてきました。
“クビ”と聞くと不幸なイメージが付きまといますが、会社としては全ての経営資源のひとつとして人材リソースの増減を調整しているのであり、それ自体が不条理な行為ではないという説明をしました。まぁあくまで人情を抜きにすればということですね。
今回は具体的に企業側から見て、どんなタイミングでリソース削減があるのか見ていきます。
■1.人材リソースが削減されるのはどんなとき?
どんなに優良な企業だろうと、新規に事業を開始したり拡大したりして100発100中でうまくいくことってないですよね。そりゃそうです。
むしろ現状に甘んじることなく積極的にチャレンジを行っている企業こそ多数のチャレンジをして、結果として多数の成功をします。もちろんそれに伴い多数の失敗をします。何事もトライアンドエラーなので、それはやむを得ないことです。
そんなとき、大きな事業単位であれば失敗して撤退→人材リソースの削減となる場合があります。企業だって優秀な人材であれば好きで手放したいわけではありません。でも人にはそれぞれ専門性がありますので、同じ領域の事業に再チャレンジしない場合は、企業としてその領域の専門性を持った人材を抱えていても意味がなくなります。
もちろん汎用的なスキルを持っていたり、そのタイミングで他チームに活用できるような専門性の場合は「削減対象」にはならないでしょう。ただ特に海外ではJob Descriptionが明確であるように「特定の役職・専門性に対して人を採用している」ことから、その役職や専門性が必要な”人材枠”がなくなれば、その人も解雇するという考えが基本にあると感じます。
■配置転換してでも無理に雇い続けるのが終身雇用。
こんなときに「何にも活用できない専門性なのに会社で雇い続ける」のがクビができない企業。
その結果「他チームに行かされ、何も知識がないので単純作業や雑務しか充てられない(なのに給与は高い)」なんてことが発生します。もちろんその本人がしっかりしていればそこでイチから勉強してパフォーマンスを出したり、そうなる前に転職してしまったりますが。。
企業としては、チャレンジの結果必要な失敗をし、人材を含めたリソースをフレキシブルに増減するのは正しい活動だと考えます。リソースというのは常々流動的に扱うものです。
もちろん社員の都合は無視して言えば、ですけどね。笑
■ポジティブなリソース削減だってある。
それにもっとポジティブな理由で人材リソースが不要になることもあります。それは業務効率化です。
昨今のテクノロジーの進化から業務が自動化していったり、海外の安い人件費にアウトソースを進めていったりすれば、業務が効率化されて今まで使用していた人材リソースが縮小できます。これは企業努力の結果です。
本題とは逸れますが、個人のパワーだけでは事業撤退などは避けられない場合も多くあります。なので日本では特に、履歴書に”クビ”とか”事業撤退に伴う事業部転籍”みたいなのがつく前に見切りをつけて転職する方が良いかもしれません。
■2.パフォーマンスの低い人材リソースを入れ替える(代謝)こそいわゆる”クビ”。
企業におけるその人のパフォーマンス(つまり結果を出すこと)は様々な要因で決まります。専門知識だったり、マネジメントスキルだったり、人間関係だったり、社風の合う合わないだったり、複雑な要因です。
例え前職で良いパフォーマンスを挙げていても、必ずしも次の職場で良いパフォーマンスが上がるとは限りません。
それに限られた時間で行う採用プロセス(主には面接)では、こちらも「必ず優秀な人材とそうでない人材を見抜く」ことはできないのが実情です。採用時に高確率で見抜くことができないから、”試用期間”があったりするのでしょう。
実際に”試用期間”で正規雇用の取りやめを行うケースがどれだけあるのかはわかりませんが、問題児であればまだしも「思っていたのと違う」程度ではなかなか解雇できていないようにも感じます。この辺り海外はどうなのでしょうね、わかりません・・・
日本でもコンサルティングファームなどでは、採用時の成功確率を100%ではないという前提に立っているため「即戦力・もしくは採用後急成長する素地があれば採用」しています。そして同時に「ダメならクビ(に近い扱い)にする」という仕組みが用意されています。
これが今回僕の言っている”代謝”です。