上司と部下の関係:上司の指示に秘められた期待値 ~3.チームパフォーマンスとレバレッジ~

人と人とのコミュニケーションなんて、ハッキリ言ってしまえば不確実要素ですよね。システムどうしがデータで渡せば、0と1で表現されたものに基本的に不確実性はないわけです。でも人が介在すると、言い方ひとつで誤解を生んだり、説明を端折った部分に限って相手が勝手な想像をしてしまったりするわけです。

上司と部下。いつの時代のどんな職業であっても悩みのタネになりますね。もちろん各国のカルチャーによっても関係性が変わりますし、職業によっては上...続きはこちら。
さて、前回は「阿吽の呼吸」に基づいた上司と部下のミスコミュニケーションについて触れました。 「まぁいい感じにやっといてよ。」 からの ...続きはこちら。

■じゃあ最初から細かく指示を出した方がいいのでは?

ただでさえ不確実な中で、さらに1を言って10を理解してもらうなんてことは最初から期待せず、最初から10を言って10を理解してもらう指示の方が効率が良いのではないでしょうか?

まぁ大きなやり直しを食らってしまい、作業的には大幅な手戻りになるようであれば最初から10を言って10をやってもらっていた方が早かったなぁと思う場面も確かにあるでしょう。さらに言えば、指示(タスクについて10の説明をする)をしている時間があれば、上司が自分でやってしまった方が早いことだってたくさんあるでしょう。

結論としてはNoですよね。

ちょっとした踏ん張りどころは気合でがんばれても、極端な話ですがチームの仕事を全部上司がやりきれるかといえば、過労云々の騒ぎではなく回せないでしょう。

■チームとしてのパフォーマンス、上司のレバレッジ。

「部下を育てたいんだけど、結局仕事は余裕ないから自分でやった方が早いんだよね」

という、ちょくちょく聞くセリフ。管理職の人、特にスタッフとの境界にいるマネージャー層に多い発言ですね。僕もそう思ってしまうことは多々ありますし、重要な会議の直前で資料が仕上がっていないような時は結局自分でやってしまうこともあります。残念ながら。

でもこうやって全部上司が自分でやっていたら最善なんでしたっけ・・・?

形式張ったことを言ってしまえば、チームや企業という「上下関係を持った組織」は高い能力をもったリーダーが、人間ひとりのキャパシティで回しきれない量のアウトプットを出すことが目的で組織するものです。最初はひとりで始めた飲食店に人気が出て、より売上(アウトプット)を拡大するために分店を出し、それらを運営するために従業員を雇うのです。気がつくとオーナーや社長として全店舗の運営方針を決めたり広く管理をするようになるわけです。

これを”レバレッジを効かす”という表現をします。テコの原理のように小さな(ひとりの)力でより大きな(組織の)力を発揮させるのです。

■指示は少なく、成果は大きいことが理想ですよね。

お分かりの通りですがサラリーマンとして企業で働く限り、上司がひとりで全部の仕事をするのは当然ながら無理です。

つまり何を言いたいかというと、チーム、ひいては会社としては、指示を受けた部下が”自分で考えて”結果を出してくれるからこそ、上司は大枠の指示だけで済み(1から10まで指示しなくていいので)次の仕事にとりかかることができます。そうやって効率を上げていくことが必要なのです。そのため上司の指示は10ではなく1に近い方が理論上効率が良いのです。

そのため会社として、上司は部下に指示を出すことでレバレッジを効かすこと(テコの原理で自分のキャパ以上の成果を出すこと)が求められます。チームとしてどれだけ大きな成果が出せるか、が上司の成果なのですから。

それを安定的に実現するには「おもんばかる文化」なんて抽象的なものではなく、なくチームの成果に必要な「仕組み」という具体的なものが必要であり、もちろん仕組みである以上はうまく回すためのスキルがあるはずです。

  • 上司にとっては「部下のレバレッジを効かせるスキル」
  • 部下にとっては「少ない指示から自分で考え付加価値をつけて成果を出すスキル」

と言うことができます。

次回からはそれらを細かく見ていきましょう。