自己研鑽:経営層・マネジメント層向け説明ストーリー・資料の作り方〜失敗の原因編〜

今回は経営層、あるいはマネジメント向け、もっと簡単にいうと偉い人向けの説明ストーリー構成・資料の作り方について書いていきたいと思います。

内容としては基礎、つまりマネージャーになりたてあるいはマネージャーになっていくクラス(役職)がメインターゲットですが、クラスを限定せず偉い人向けの資料を作る機会が出てきたメンバーにも有効です。また基礎とは言ったものの言葉選びが正確でなかったかもしれません。基礎と言うと初歩感を感じるかもしれませんが、どちらか言うと土台というかコアになる内容だと思います。なのでクラスに関係なく、僕自身もこれを書きながら改めて骨子の重要性を再認識しつつ(背筋が伸びた)かつ自分のやり方を言語化できたことでスキルのブラッシュアップにつながったと考えています。

さて前置きは置いておきつつ本題に入りたいと思います。

マネジメントへのプレゼンで話を止められてしまうのは、説明のストーリーや資料を含めた構成の悪さに起因する。

クライアントの偉い人とのミーティングでこんなこと言われてしまったことがある人は、今回の内容が活きると思います。

「細かいところはいいんだけどさ、つまりどういうこと?」

「そもそも今日は何の話なんだっけ?」

「何を言ってるか分からないから、もう一度整理してきてよ」

まぁここまでハッキリと言われるとヘコみますが、自分がプレゼンしている途中で偉い人にこんなふうに話を遮られたことありませんか?こういったタイプのコメントは説明のストーリーや資料を含めた構成の悪さに起因しています。シンプルに言うと相手にとって分かりづらく、自分に独りよがりな構成になっていることが原因です。

普段現場向けのミーティングではしっかりと説明ができて、相手も内容を理解して議論が弾んでいる。でもマネジメント向けの肝心なミーティングで失敗してしまう。そういう人は基本的なロジカルシンキングや資料作成はできるのかもしれませんが、マネジメント層の視点・観点を理解した構成が組めていないということです(そもそも現場向けのミーティングでうまくいかなければ、それ以前の基礎的なロジカルシンキングや資料作成の問題)。

ではまずマネジメントへこういったプレゼンを行う具体的なシーンを考えていきたいと思います。

これ全部というわけではないですが、コンサルタントが関与する内容は以下の3点がメインだと考えています。コンサルタントはプロジェクトというスタイルで何かを推進しているため、社員と異なり関与する内容が限定されます。

  1. Yes/NoあるいはA/B/C案比較の意思決定:予算実行の承認、提携先企業の選定など
  2. プロジェクト検討結果の説明と確認:新規部署立ち上げに伴う組織構造の検討結果報告など(異議がないことを確認してもらい承認をもらうニュアンスが強い)
  3. 進捗・リスク・課題といった状況報告:競合調査結果等のリサーチ報告、プロジェクトの状況報告など

社内の人間だと、その他にも定常的なKPIの数値報告、インシデント報告などもあると思います。こうして書き出されたものを見ると「別に知ってるし、新しい話ではないよね」と思うかもしれません。問題なのはこれらのことが頭では理解できているのに、なぜかプレゼンや資料作成をする際にこれらが全体のコンテンツの中で相対的に埋もれてしまうことです。

その結果議論の発散による時間切れや、意思決定や今回は承認を保留にされるという”ダメ会議”になるでしょう。それに加えて経営層との会議は多頻度・直前で組めるものではありません。1回意思決定や承認が延びるだけでプロジェクトスケジュールは結構変わります。もちろん最初から意思決定や承認に3回も4回も会議を予定したらプロジェクトスケジュールが長くなってしまい、コンサルタントの価値が下がってしまいます(Time is money、それにコンサルタントは期間に対してフィーが発生する)。いかに少ない回数で結果を出すかが重要になります。

プレゼンや資料において上記の1~3が埋もれてしまうという問題、これはどうして発生してしまうのでしょうか?

良かれと思った過剰な丁寧さ、過剰な情報により要点が埋もれる。さらに相手へ求めるアクションが不明確だと「それで?」となる。

基礎的なロジック・ストーリー作りや資料作成スキルはあることを前提として、一番多く見かけるのは細かいファクトやロジックを盛り込みすぎて、端的ではないということです。これまで主に以下のような経験をしているメンバーに多いですね。

  • 現場向けの資料、例えばなんらかの企画資料、BPRにおける議論・業務説明資料といった、細かいところまで検討が行き届くべきあるいは気が利いているべき資料を作成・説明を行なってきた
  • リサーチの報告資料、ファクトをかなり重視する内容になっていて、バイアスがかからないように調査結果を平たく並べる資料作成、説明を行なってきた
  • システム要件定義資料、考慮漏れがなく不整合が起きないことを重視する内容になっていて、端々まで網羅されていることが重要な資料作成、説明を行なってきた

こうして網羅的な思考で資料を作成し慣れてしまうと、つい良かれと思って丁寧にしすぎたり色々と情報を付加してしまいます。もちろんプロジェクトの現場レベルの議論では、漏れのない検討を進めているというアピールを含めて、これが適切なのかもしれません。でもマネジメント層を相手にした会議は特性が違うのです。その特性を踏まえずに現場レベルの議論と同じプレゼンをしようとするから会議を狙った結果に落とせなくなります。

マネジメント層向け資料の作り方

マネジメント層、特に経営レベルを相手にした会議の特性は大まかに言うと、

  • 内容は説明範囲が広く、重要度が高く重い
  • 一方で説明に与えられる時間が短い

というシチュエーションです。この2つはギャップしますよね?それが難易度を上げているのです。

“経営層を相手にした会議の特性”についてもう少し補足しておくと、経営層に持っていくような議論や報告はひとつひとつが大きな話であることが多いです。施策、あるいは新規事業やサービスそのものかもしれません。それを30分や、場合によっては10分ぐらいで説明して質疑をし、意思決定を仰がなければなりません。新規事業やサービスといった単位のものは、実現までに現場で詳細な議論を繰り返して内容を練り込みますが、それを30分で全て伝えることなどそもそも無理です。

だから”論点をクリアにする”ことが必要です。そう言われると当たり前のようですが、頭で理解しているものの行動に反映できていないケースを多々見かけます。それが前述した”網羅的思考による過剰な丁寧さ、過剰な情報”です。この様なプレゼン及び資料構成では議論したい論点、そして伝えたいことをぼやけさせてしまいます。企業全体を広く見ている多忙なマネジメント層は、ひとつひとつの議題で網羅的に内容を見てくれる立場ではないのです。

それと”論点をクリアにする”と言った時に、これまで色々検討してきた全事項からそれぞれの論点を網羅的に洗い出そうとする人がいます。それでは結局広く浅い内容になってしまうのでこれは誤りです。そうではなく絞った深いコンテンツ作りを意識してください。

先ほど書いた1の意思決定、2の検討結果の説明と確認をメインに据え(3の状況報告はサブ)、そのポイントだけが資料全体の中で浮き出るように、余計な情報は削ぎ落とし伝えたいことは強調します。またポイントごとに相手に求めるアクションが”承認”、”議論”、”知っておいてほしい”なのかを明確にわかるようにします。相手へのアクションが不明確だとコンテンツを説明されても「ふーん、だからなに?なんでこの話してるんだっけ?」と思われてしまうことも多く、内容は悪くないのに盛り上がらない、歯切れの悪い会議になってしまいます。

これについては具体的な対応方法を後述します。

まずはプロジェクト現場レベルと経営層の一般的な視点の違いを理解し、構成を練る際に念頭におく。

これまでマネジメント層へのプレゼンや資料作成をして来なかった人向けに、ざっくりと現場レベルの視点とマネジメントの視点で違いが出やすいポイントを列挙しました。

  • 細かい内容よりも大局を見る
  • 個別最適よりも全体最適で見る
  • 実現方法よりもビジネスインパクトや実現までの期間・投資コストを見る
  • 有効数字は1桁で見る
  • (人数が集まる経営会議などでは)様々な部署・立場から客観的に見る
  • 思ったよりもセンスによる直感的・感覚的な判断もある

もちろん一般的な傾向になるので、どんな経営層でもこれに該当するとは限りません。まずは初めて関わる経営層にはこういう考え方で挑み、その後その人のキャラクター・好みに合わせてアジャストしていくのが良いと思います。実際には細かすぎる人だっていますし、特定のポイントだけこだわる人もいます。

  • 結論から言うことを好む/ロジックを積み上げて最後に結論を伝えることを好む
  • その人の立場・出身部署などによって特に気にしているポイントがある

などなど、人それぞれです。初めて会うマネジメントの方でも、現場メンバーから事前に情報を仕入れておく方がベターですね。

マネジメント層向け資料の作り方

それと最後の「思ったよりもセンスによる直感的・感覚的な判断もある」というのは僕の経験則です。創業者・創業メンバーや、会社を大きくしてきた立役者に多いかもしれません。それはその人のセンスと経験値によるものだと思いますし、ポリシーによることもあります。

特に「ファクトからはどちらとも言えないなぁ」という判断が難しい状況で「もっと判断できる情報を持ってこい」という人と、直感的でも早く意思決定をしようとする人でビジネスの結果に差が生じるケースもあります。どちらが良いかと言うとケースバイケースですが、”タイミングを逃してはならない意思決定”において不確実要素が残っていても意思決定できることは重要だと僕は思います。また”その意思決定の責任を取れる裁量権がある”立場だからこそ、直感的に意思決定をする選択肢があるのだとも思います(その責任を取れない人にそれは求められない)。

ただし単独の誰かによる直感的・感覚的な判断は周囲も同じ納得感を醸成できません。それでもこういう意思決定ができる状況は、悪く言うと”ワンマン社長がこうだと言ったらみんな文句を言えない”という状況であることも多いです。対極にあるのは”互いの顔色を伺いすぎたり、責任を追及されるのを避けて誰も意思決定しない”という状況ですが、これはバランスの問題で両極端になってはいけません。今回話に挙げた直感的・感覚的な意思決定についても、例えば周囲にも直感的な意見を求めてある程度の合意感を醸成する、あるいは「ここは責任を持つからやらせてほしい」と明言するといった対応が必要です。

これについては話が逸れてしまったのでまた別の機会に書きたいと思います。次回はストーリー構成の練り方についてです。続きの記事はこちら。

前回は経営層、あるいはマネジメント向け、もっと簡単にいうと偉い人向けの説明ストーリー構成・資料の作りで失敗の原因となりがちな事項について記...続きはこちら。