自己研鑽:書籍による勉強はコンサルに必要か。~ベーシックスキルは本を読め編~

■まずはキャッチアップに対する書籍のススメ。

再度書きますが、僕個人としては書籍による勉強を強く推奨します。書籍による勉強で効果的なのは2つあると思っています。

  • ロジカルシンキングやスライドライティングなど、土台となるスキル系
  • 最新のテクノロジートレンドや、業界知識、業務知識などのナレッジ系

まずは前者について話していきます。

もちろん新卒からいる人も、業務時間とは別に勉強することを推奨します。ですが昨今の拡大を続けるコンサルティングファームに対する危機感から言うと、なによりも中途でコンサルに入ってきた人は書籍による勉強をして欲しいです。

なぜなら中途で入社する人はコンサルティングファームから「ここまで培ってきた前職の業界・業務知識」が欲しくて採用されています。新卒とは採用されるメインの要素が違うのです。

もちろんロジカルに考えられるかなど、コンサルティングベーシックスキルも採用時に見られますが、その領域の輝きを求められているわけではありません。つまりロジカルシンキング等は「キャッチアップできる範囲で素養があるか」を見られます。

その結果、大量採用された中途の人たちはコンサルティングベーシックスキルの土台が最初はあまりできていません。それは当然ですし悪いことではありません。前職が違う業界であれば、その人の売りは前職の業界知識や業務知識なのですから。でも現場では「いつまでも業界・業務知識だけ知っていれば良い」とは思われません。コンサルティングファームに中途で入社するということは、コンサルティングベーシックスキルについて人一倍の懸命なキャッチアップが期待されています。「即戦力として頑張って欲しい!」と言われようがキャッチアップは必要なのです。

■自力でキャッチアップしようとしてない中途がプロジェクトに入ってくると、結構困る。

厳しいようですが、コンサルタントにとってロジカルシンキング等のスキルは基礎であり、言わば手足の神経です。「粘土で何かを作ろうとする際に、自分の一本ずつの指が思った通りに動く」という無意識のレベルで身にしみていく必要があります。

そんな中で、ハッキリ言えば業務の現場でそんな基礎を手取り足取り教えたくなんかないわけです。そんなところから指導をし始めると忙しい現場で時間がいくらあっても足りないので、ポイントポイントで要点だけ指摘します。

つまりある程度の基礎的な知識は、当然のごとく事前に各々がインプットしてきており、それを実際に使ってみて”身にしみさせる(実践と慣れ)”を行う場がOn-Job-Trainingの「キャッチアップ」であってほしいです。新卒入りたてならまだしも。。

入社して期間が経っていないからといって、

「ロジカルシンキングって具体的にどのようなものですか?」

と言ってくるような人は、そもそも仕事に対する姿勢(マインド)からやり直す必要があります。そういう人は1プロジェクト目はほぼうまくいきません。マインドが入れ替わらなければ2プロジェクト目以降もうまくいかないことが多いでしょう。

■大量中途採用と人材品質低下の罠。

ですがあまりに大量採用が進んでしまうと、中途の周囲にも中途採用されて日の浅い人たちがそれなりにいて、「あ、コンサルティングってこれぐらいで良いんだ」という謎の錯覚を起こしている人が多いです。つまり努力していない。そして結果も出ずにすぐ退社する人も多いのが”事実”です。

中途の方は「自分には新卒からいる人と違う強みがある」と同時に「自分はコンサルティングベーシックスキルにおいて、周囲から後ろのスタートラインに立っている」ことを自覚してもらう必要があります。

謙虚にマインドを切り替えられなかった場合、1-2年で会社を去る人が多いでしょう。残念ですがそういう人は多く見かけます。特に前職で中堅・ベテラン層だった人たちはプライドを捨てて謙虚になれない人もいます。

■書籍による勉強の位置づけを理解する。

これは非常に大切なことだと考えていますが、インプットにもいろいろな位置づけがあります。それを考えずにがむしゃらに勉強を進めても効果は限定的でしょう。

まず僕の中で、知識にもレベルがあるだろうと分けてみました。

  1. 入門レベル(キャッチアップレベル)
  2. クライアントと雑談でそれっぽいことが言え、「なるほど」と言ってもらえるレベル
  3. ソリューションを生み出し、それを提言・提案として持っていけるレベル

書籍による勉強が効果を産むのは「1. 入門レベル(キャッチアップレベル)」が中心で、「2. クライアントと雑談でそれっぽいことが言え、「なるほど」と言ってもらえるレベル」までだと考えます。それは後ほど詳しく説明します。

また一方で先ほども挙げましたが、知識にも種類があります。言葉は適切かどうか微妙ですが、ざっくりと以下2種類に分けました。

  • ロジカルシンキングやスライドライティングなど、土台となるスキル系
  • 最新のテクノロジートレンドや、業界知識、業務知識などのナレッジ系

前者のスキル系は”流行り廃りがないもの”であり、一度自分の身につけてしまえば定期的に最新の情報をキャッチアップしていくほどのものではありません。日々の業務の土台となり、一度一通りを学べば、あとは実務の中で深まっていきます。

一方で後者のナレッジ系は”日々早く変わっていく最新情報”であって、定期的な情報のアップデートがないと、ビジネスの最前線で日々もがいているクライアントと話はできません。そのためこちらはベテランだろうと若手だろうとこまめに情報をインプットしていくことが必要になるのです。

ではこの2つのうち、書籍が効くのはどちらでしょうか。僕は両方に効くと思っています。ただしあくまで全体像の把握、つまり入門レベルの話が主でしょう。

■スキル系とナレッジ系はどう学ぶべきか。

まずはロジカルシンキングやスライドライティングなど、土台となるスキル系です。こういったものはコンサルティングファームであればスタッフレベルのうちに各社で受講必須トレーニングが組まれているでしょう。書籍の位置づけはそれに近いです。

一方でOn-Job-Trainingというより実業務では、上司と指示のやり取りをしたり、ミーティングをしたり、資料を作成する中で今回のような”スキル系”についてポイントポイントで指導を受けることが多いでしょう。できていない点は明確に指摘を受けますし、実際にスキルを活用して仕事をしている人たちを間近で見ていれば多くのことを学べるはずです。

実際に実務をしている中で受ける指導は、「こういった場面ではこのように考える」「実践的にはこう方法論を応用する」といったように実際の自分の経験(シチュエーション)と学ぶことがリンクしているので、学ぶことも深いですし、なにより次回同じようなシチュエーションがあれば自分の力で同じことをできるようになると思います。

その反面、全体像がわかりづらいのです。点で、あるいは線でスキルを深く理解しても、全体像である面までは理解しづらい。

そして全体像まで全てを現場では説明してくれないでしょう。それは非常に時間がかかりますし、座学のようになってしまいます。時間を割いてやってくれる人もたまにいますが、基本的には現場は「お勉強する場ではない」ため、自分で学んでくる姿勢が必要です。

そこで活躍するのが書籍でしょう。もちろん座学型のトレーニングがあれば受講するのも有効です。体系立てて広く(ただし浅い)全体像を学べば、少なくとも現場では何から着手したらいいかぐらいはわかるはずです。そして都度指導を受けた際に、

「あ、これは全体のうちのどこどこについて言っているんだ」

というのがわかります。そしてお互いに”言葉”を知っているので会話が早いのです。

例えば、

「横のロジックだとこれこれが不足していて、縦のロジックだとこの辺りにあたりをつけて深堀ったらいいんじゃないかな」

と言ったときに、「縦のロジックと横のロジックって何すかね・・・?」とか言われると「オイオイ・・・」となるわけです。そんなとこから説明するぐらいなら別のメンバーにその仕事を任せてしまったほうが早いと思ってしまいます。

ロジカルシンキングのいろはを知っている人はなんとなくそれらが何を指しているかわかるはずです。このように全体像を体系立って知っていれば、お互いが会話する”言語”も理解できるようになります。