人材戦略:代謝、つまりクビは必要か。~企業の新陳代謝は一定必要編~

企業のクビ活動について考える最終回です。僕はクビは一定必要であり、程よい緊張感と適切な人材レベルを保つには有効な方法だと考えています。これは人材の入社選定時に確実にパフォーマンスの出る人材を選定することが難しいことの裏返しでもあります。

ズバリ、人をクビにする行為は必要なのでしょうか。 日本企業の多くはいわゆる終身雇用を敷いていますが、終身雇用というのは結果であ...続きはこちら。
前回は人材を解雇することの意味合いについて書いてきました。 "クビ"と聞くと不幸なイメージが付きまといますが、会社としては全ての経営資源の...続きはこちら。

■パフォーマンスの悪い人材は周りにも悪影響を与える。

結論として僕は”クビ”の仕組みは必要だと考えています。事業を撤退するから部署ごと整理というほうではなく、純粋に成果が出ない人材を入れ替えるということです。

クビというと不条理な印象を受けますが、企業活動における必要な人材リソースの拡縮と、優秀な人材の濃度を高める代謝を指しています。特に日本で馴染みがないのが、パフォーマンスが悪い人材の”代謝”。これは単純に給料泥棒だ!というニュアンスの他にも悪影響があります。

  • 仕事には合う/合わないがあるので、本人のためにも別の活躍できる場を探した方が良い
  • 周りのモチベーションを下げるリスクがあるので、その本人だけの問題ではない

特に2番目がキケンですね。世の中に非常によくあるコメントとして、

「なんで自分より仕事できないアイツは、自分より給与が高いんだ」

というのはこれに該当します。パフォーマンスが良い人材こそ優遇されるべきで、このルールが崩れると優秀だった人材もモチベーションが下がっていきます。

さらに仕事はチームでこなすことがほとんどで、パフォーマンスが悪い人間がいるとチームの足を引っ張り、やる気のある人間からやる気を奪います。鋭意頑張ろうとしていればまだしも、積極的なやる気や責任感も見せないようであれば”お荷物”なわけです。

これによって優秀な人材も「この職場環境では自分のやりたいことがやれない」とか「より優秀な人材の集まる環境で、自分を高めていきたい」とかって思うようになってしまうわけです。

特に上司を勤めている人たちからすると、部下のモチベーション管理は難しいですよね。疲れますし、気がつくと自分はご機嫌伺いになって何をやってるんだろう・・・とかって自分のモチベーションが下がってきたり・・・わかります。言葉を濁さずに言えば、お荷物はさっさと切ってしまいたい。笑

■”辞めさせる”ことはできても、業務が途切れないように配慮が必要。

パフォーマンスの低い人材をクビにすることはできるとしても、企業としてはすぐに代替リソースが必要になってきます。この辺りが難しいところで、人材を入れ替えるといってもいなくなった人の代わりがすぐに入社してくれるとは限りません。

理想は”辞める人”と”入ってきた人”の両方を1カ月程度重複して雇い、引継ぎをさせることです。でも転職等で自ら退職をする人と、クビにする人は違います。クビが宣告された人は多少、退職までの日数猶予があったとしても引き継ぎをするモチベーションなんて期待できないでしょう。であればもう引き継ぎナシでサクッと入れ替えてしまうことも一つの選択です。

新しく入社してきたメンバーにわざわざ最初の1カ月、モチベーションの下がるメンバーとみっちり過ごさせるデメリットのほうが大きいかもしれません。これが業務状況によって判断ですね。

かく言う僕も、会社をクビではなくプロジェクトから何人かのメンバーを外したことがあります。特にコンサルティングファームでは至って普通の代謝です。でも頭を悩ますのは代替メンバーの補充なんですよね・・・

■一定の”代謝”は必要だと思うが、その代わりに新たな人が応募したがる”魅力”が必要。

結局、企業にとっても雇われる人にとっても、お互いに選び合う立場なんですよね。なので自分たちは人材市場で価値を認められるようにスキルを積んでキャリアを築いていくわけです。

それと同じように企業も選ばれるように魅力的でなくてはなりません。でないと中途採用の応募もなく、困ったことになります。

そうすると次はなかなか人を辞めさせることに躊躇が出ます。この負のループによって企業の代謝が悪くなって来るんですね。そうするとクビにならないのをいいことにのさばる社員が出てきます。パフォーマンスに対する良い焦りが無くなると、どんどんぬるま湯に浸かったカルチャーが出来てしまいます。

このカルチャーが、僕が人材代謝推奨派であるイチバンの理由です。

そうなると、給料もあげられなかったりして、働くモチベーションが感じられない企業になるとさらに社外からの応募がなくなる、あるいはろくな人材を選ばなくなります。

ひどい負のループですね。こうなる前に企業も自社の魅力づくりが必要です。

魅力は人によって感じ方が違いますが、高い給料であったり、成長できる環境であったり、ワークライフバランスをはじめとした働きやすさだったりします。もちろんバランスよく高得点が必要ですが、会社の魅力を何に据えるか一貫したプランが重要です。

この両輪でこそ人材の代謝は可能になるので、片手落ちにならないよう人事部主導で会社の魅力づくりを行っていく必要がありますね。