デジタルトランスフォーメーション:AIの本質を探る。~AIの学習とメリット編~

前回は”AIってすごそう”というイメージが先行してしまって、結局何をやってくれるのか、何がすごいのかわからないということを説明しました。

そしてAIは学習するところがすごいと書いたのですが、今回は具体的にどのような学習をするのか考えてみたいと思います。

前回までの記事はこちら。

近年で最も思考停止ワードだと考えるのがDigital Transformationの、特にAI。 AIって聞くと、もうターミネータの...続きはこちら。

■子供の学習をAIに当てはめると、基本的な学習方法は人間にも似ている。

以前、AIの学習は子供が勉強をして色々なことを学んで行くことに近いと説明しました。之尾をもう少し細かく、AIに当てはめて見ていきたいと思います。

ここでは前回記事の「朝家を出るときに雨を見越して傘を持ってバスで行くか、チャリで行くか」の判断を行う例に戻りたいと思います。

①親が勉強の仕方を教える

AIは特に最初は学び方を教えてあげる必要があります。それが雨の話に戻れば、”西の空について様子を見る”、”今日の勤務終了予定時間を見る”、”飲み会の可能性を見る”、”今からバスに間に合うかを見る”・・・などなど”人間が既に気づいている”様々な判断の観点を教えてあげることです。

②親が勉強材料を与える

次に勉強材料を与えます。”西の空について様子を見るんだよ”と教えたところで、それがどんな状態だったら雨が降るのか教えないといけないですよね。それは過去データを与えて学ばせます。

それぞれの判断材料に対して、まず過去5年分のデータを投入して各判断材料の傾向を理解させるのです。何がどういう条件だったら、結果として雨が降っているのか分析させます。

さらにここで”現在の西の空の状況”と”これからの降水確率”には一定の関連性があるんじゃないか、という判断材料どうしの関係性を探ります。(ごめんなさい、どのAIエンジンがここまで進んでいるかまではわかりません)

③自分で勉強を継続させる

さらにここからは自己学習してもらいます。つまり過去の傾向をヒントに、毎日毎日朝の判断材料と、その結果夜雨が降ったのかどうかをひたすら検証して、過去にデータがなかった判断項目も含めてデータを蓄積していきます。

これで毎日異なる様々な条件から判断をしつつ、うまくいった・うまくいかないを学習して判断精度を高めていくのです。旧来のシステムと違うのは、AIが自身で改善のサイクルを回していくことにあります。

④自分で新しい判断材料を見つける

親が教えなくても、これが「パパ」だというだけでなく、子供はもっと学習を進めます。勝手に「ママ」も覚え、ママとは女性だ、ママは家にいるがパパは仕事で日中いないなどまで学習します。

AIにもこういった「勉強の仕方を教えていないのに自分で新しい発見をさせる」能力があります。これは「夜に雨が降るかどうか」を判断するうえで、影響するかしないか人間にもわからないような不特定多数の要素をAIにデータとして投入し、AIがこの要素は「関係ある」「関係ない」と判断していきます(あるなしの0か100かではないのですが)。
正確にはおそらく、蓄積しているすべてのデータ項目に対して「雨が降ることの相関影響度」を分析していき、結果としてまったく関係しない項目は0~1%ぐらいの影響度となって実質判断に使われないのだと思います(仕組みによる)。

よくわかんないですよね。笑

“風が強い”、”鼻がムズムズする”、”花壇の花が元気ない”とか、雨に影響するのかしないのかわからないものまで人間は五感で感じます。その結果”夕焼けか朝焼けか”、”肌がジトッとするか”などの雨の判断に影響する新しい経験則を生み出してきました。AIにも同じことをやらせます。

人間の五感の代わりに、ビッグデータをAIに投入するんです。もはや無作為なレベルで、雨に関係するのかしないのかわからない要素を含めて、大量に蓄積したデータを投入します。そして雨という結果に対して特定の傾向を示す要素、他の要素との関連性を模索させます。そうすると人が思いもつかなかった要素が、天気の判断材料になっていることが見つかるはずなのです。

これらの積み重ねがAIの学習機能。今日、提案を受けたAI導入には果たしてどこまで実装されていますか・・・?

■AIが学習するという特性はわかったけど、結局ビジネスメリットは?

改めて、「もし現時点で雨が降っている、もしくは現時点で雨が降っていなくても天気予報で1日のどこかの時間で雨予報があれば、傘を持ってバスで行く」という判断ロジックが今までのシステムのイメージだとします。

今回の例では、たとえ結果が「チャリで行く」「バスで行く」の2パターンしかなくても、どちらを選ぶか精度が大きく向上します。ましてや実際の業務ではその結果が2パターンではなく、ものすごい数のパターンになることもあるのです。

長くなりましたが、ここまでがAIとは何?という話でした。

そして本質的にAIのいいところは、

  • 人間だと見きれない量の判断材料を元に結果を判別するので、精度が上がる(設計によっては人間の精度を超える)
  • 瞬時に判断材料を読み込んで結果を出すので、判断の処理速度が桁違いに早い
  • システム初期投資は大きいが、大規模に長く使えば人件費より安い

といったことがあります。一見すると万能に見えますが、少なくとも現在の技術ではそうではないと思います。これらが活かせるような領域にAIを配置するのがキモであって、使い所ひとつで活かせる場合も、既存の仕組みと変わらない場合もあります。

僕は「単純に人の代わりを高速でさせる」のがロボティクス(RPA:ロボティクス プロセス オートメーション)、「人を超えた判断精度・処理速度を目指す」のが(AI:アーティフィシャル インテリジェンス)というイメージでいますが、これは正確に誰かが共通の定義をしているわけではなさそうです。

なので様々な企業が持ってくるRPA・AIの提案については、その本質的なレベルを判断する必要があります。

こういってはなんですが、定義なんてどうでもいいのです。僕たちはビジネスマンであって科学者ではないのですから、結局どうAIを活用すると儲かるのかが大事です。

それを判断するために、AIには何がどのレベルでできるのか、それが自社の何にハマって、どんな成果を生むのか。これが本質です。

単純にこの成果と投資額を比較してROIを試算すればいいですし、そのレベルを目指すのかによってパートナーとする企業を選べばいいと思います(かなり差があるため)。