デジタルトランスフォーメーション:ステークホルダーへのアピールとしてのデジタルとは。

とりあえずデジタルで何かやりたい。

そんな漠然とした要望を経営層から受けることは実際に多いです。そしてどちらかというとクリエイティブなトーンではなく、デジタル化を進めてないことへの漫然とした焦りから来ていることが多いように感じます。

■デジタルとはHow側であり、ビジネス上何を成すべきかを考えるべき。

デジタル化について何かやらねばならないのだけど、ずばり何からやったらいいのか分からない、というのが実情だと思います。それが悪いというわけではなく日本国内ではまだまだ普通のことなので、お陰様でコンサルティングファームに仕事の依頼が来ている状況です。

ただこのような状況だと、

「とりあえずウチにもこのデジタルツール入れてよ」

という具体的なHowありきで要望をもらうことも多く、これは良いこととは言えません。デジタルというのはあくまでHowを効率的に実行するツールであり、まずはあくまでビジネス上の成すべきことがあって、それを実現するのにデジタルツールが最適なら活用するべきなのです。

ただデジタル革命によって確かにHow側でできるようになったことが急速に拡大したため、上流に遡ってビジネス上で成すべきことも拡大したのは事実だと思います(電気の発見と同じで、このHowでやれることの拡大を起点として、ビジネスニーズを創出していく流れがイノベーションなのだと思う。これについては別で記載したい)。

■一方で経営者は早急にデジタル化推進をステークホルダーにアピールする必要がある。

一方で、とはいえ経営者としてなんらか”デジタル化”をアピールできなければならないのは理解できます。実際は”デジタルとは何か”を語れる人はほとんどいないように感じますが、それでも

「デジタル化をしているか?Yes or No」

という漫然とした問いは多く耳にします。要は波に乗れている企業なのか?競争力がありそうなのか?新しいことにチャレンジしているのか?と言った印象が、先程のデジタル化しているかという回答に大きく影響を受けるのです。

そして経営者はこれを様々なステークホルダーに対してアピールをしていく必要があります。

  • 顧客
  • 株主
  • メディア(競合他社優位性アピール)
  • 社内

先程の問いに戻ると、なんらかデジタル化をしているかという回答はYes or Noしか求められていないので、それがゆえに「なんでもいいからデジタル施策をやってくれ」というHowありきの依頼になりがちなのです。

ただしこれも、もう少ししてデジタル関連の理解度が世の中で深まれば、当然ながらもっと具体的に何をやってるかが問われるようになるでしょう。なので”効果があるかはわからないけどとりあえずデジタルの何かをやってみる”というのは付け焼き刃の対応にしかなりません。

■アピール用のクイックウィンと、中期デジタル化戦略を分ける。

コンサルタントはつい正論ありきになってしまうので

「いえ、デジタルトランスフォーメーションはビジネスとして何を成すべきか検討した後に、具体的なデジタル施策を検討すべきです」

とか言ってしまいがち。クライアントのためを考えて言っているのですが、特にデジタル化後発企業はステークホルダーへのアピールを焦っているので、これでは経営者と話がすれ違ってしまいます(システムインプリを中心とした他社サービスに行ってしまう)。

経営者の気持ちも理解する必要があります。それにステークホルダーへ良いアピールをすることは、すぐに直接的な利益になるものではありませんが企業の運営上重要なことでもあります。決してこれを目先の付け焼刃とだけ考えて無視するべきではないです。

そこで僕は”クイックウィン(Quick Win)”と”中期計画”を仕分けて、セットで提案をするのが良いと考えています。中期計画はもちろんビジネスで何を成すべきか検討したうえでデジタルの活用ポイントを炙り出していくのですが、時間がかかります。一方でクイックウィンではビジネスを上流から練り直すのではなく、すぐに導入に入ることができ、かつ小さく投資してしっかりと効果が見える施策を中期計画検討と並行して進めます。

このクイックウィンはずばりコスト削減を行うタイプのデジタル施策が良いと僕は考えます。これについては次回詳しく書いていきたいと思います。