最近の規模の大きなデジタルコンサルティング参入のニュースといえば、富士通が新規設立したRidgelinez(リッジラインズ)でしょうか。元々デジタルの名を掲げた事業は多数やっていたのですが、あくまでソリューション・プロダクト売りの立ち位置でした。それがもう少し上流からデジタルを扱うべく、大きな投資をして立ち上げたコンサルティング会社がこのRidgelinezです。
■昨今において”デジタル”と名のつくテーマは避けられない。
以前大きなIT企業の事業拡大に向けた支援をしていたのですが、既存で扱っているテーマ(事業領域)が市場飽和してきているため、やはり新規テーマに進出をしていくしかない状況でした(それはクライアントも分かっているが、どうしたらよいかわからないというのが実情)。
IT企業といってもSIerやITコンサルティング、システムプロダクトベンダーなどなど、多岐に渡ります。それぞれの立ち位置やアプローチは違えど、やはりどの企業も”デジタル”の名を謳い専門の組織や製品を立ち上げています。
はっきり言って看板を掲げることと、とりあえずその専門名がついた組織を立ち上げることはどの企業でもできるのですが、その先の”実際にデジタルを顧客に適用できる”企業はあまり多くないというのが勝手な実感です。
これはどういうことかというと、技術的に何かシステムを開発導入することはできるけど、それをビジネスの収益につなげ投資対効果を高めるところまでは、たどり着いていないということです。
これまでは”デジタルトランスフォーメーション”という言葉が先行して、先進技術を活用したプロダクトをとりあえず導入することが目的化してしまうこともありました。でもようやく(遅いかもしれませんが)、費用対効果の議論、そもそも顧客にとって本当に必要なのかどうかという議論がされるようになり、”とりあえずのデジタルプロダクト導入”も待ったがかかるようになりました。
こうした”なかなか手放しにはデジタルプロダクトが売れない”状態がやってくることは正しいことだと考えています。デジタルプロダクトを販売するために、まずデジタル技術をクライアントのビジネスに適用することと、その費用対効果を説明することが必要だということですね。
■デジタル関連製品の導入前に、クライアントにフィットさせるためのコンサルティングが必要。
デジタルトランスフォーメーションに関して、レベルは差があれどプロダクトはどんどん新しいものが出てきているように思います。一方でIT企業がぶつかっているのは売り方、つまり”クライアント固有のビジネスに当てはめる”というコンサルティングができないことだと思います。
ITの長い変遷の中で、現在は”新しい技術をプロダクト化すれば、導入するだけでクライアントのビジネスに良い影響を与える”というフェーズが過ぎ去ろうとしています(もちろん全てではない)。顧客のビジネスにうまく適用し、効果を最大化しなければなりません。そのため特に技術ありきでビジネスに変化を与えるデジタル関連のテーマについては、ビジネスにどのように活用することができるのか曖昧です。そのためデジタル領域こそシステム導入の前にビジネスへの適用を練り込むコンサルティングが必須と考えています。
事実として特定の技術市場では製品そのものの売上の市場成長率よりも、コンサルティングを含めた周辺付帯サービスの成長率のほうが高いというデータがあります。また一般論にはなりますが、各企業がデジタル化推進において阻害要因となっていることが、「自社業務プロセスへの適用方法がわからない」「費用対効果が説明できない」などという開発導入前の上流工程に多くあります。これは一般的にコンサルティングがカバーする領域であると考えられます。
■各社がデジタルコンサルテーションに参入するのは自然な流れ。
上記のようにデジタル関連のプロダクトを販売しようとすると、上流工程としてコンサルティングサービスが求められます。
誤解の無いように付け足しておきますが、ここでは”コンサルタント”がデジタルの企業適用を検討すべき、と言っているのではありません。これまでの長きに渡って新規事業の検討、業務プロセス改善、適切なツール選定などを社外から行ってきたのが”主にコンサルタントだった”ということから、現在デジタル領域の前述課題を担うのに一番近い立場がコンサルティングファームではないかと考えています。そのため僕は便宜上”デジタルコンサルテーション”と呼んでいます。
既にいわゆる総合ファームを中心に、戦略ファーム、ITファーム、そして既存コンサルティング業界以外からもプロダクトベンダー、広告代理店、サービサーなど多岐にわたる業種からデジタルコンサルテーションへの参入が行われています。
これはB2B企業が自社サービスやプロダクトをデジタルトランスフォーメーションする過程で、それを販売するためにはデジタルコンサルテーションが必要だという結論に至ったためでしょう。
ただ実際に適切なコンサルテーションを提供できているかは別の話です。コンサルティングはその価値を人材に大きく依存しています。そのスキルを持った人材を外部採用する、また自社で育成するにも時間がかかるため、特に異業種からコンサルティング領域へ参入した企業はまだキャッチアップ段階にあると言えるでしょう。コンサルティングを依頼する側のクライアント企業は、依頼をする際に相手の力量を見極める必要がありますね。